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作品 - 20200325_555_11777p

  • [優]  四季 - 夢うつつ  (2020-03)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


四季

  夢うつつ

  ―花びらって、飛んでいるから、いつも私
   の体の中に充満してゆく。そのために口
   を開けっ放しにして、そこからみんな、
   蒸発する前に、すぅって、息を吸って、
   別れの言葉を言える、全てが死んでいる
   この瞬間なら
  ―――春は、何も知らないまま生まれた命
    が、指の先端にくっついている気がす
    るから、体の内側から、何もかも咲い
    てしまって、ひっそりと形を、覗かせ
    ている
  ―――――体の中にまた、少しずつ満ちてゆく
     香りだけのまどろみ。まるで、現世
     のように美しいてんごくが、体だけ
     気化させて、妖精たちを小さく囲い
     ながら眠る
  ―――――存在が、もとからできないから、話
     す言葉ぜんぶが嘘だって気づかれた
     まま、花嵐が、巻きあげているの
     は、ただの春と、ただの私たちの死
     骸と、心情
  ―――声に、ならなかったはずの、すべての
    物が、形を持つ季節、世界の輪廻が、
    ここからはじまって、そしてここで終
    わるような、世界に、してください、
    神さま
  ―花びらって、死んでいるから、いつもこ
   こに流れ着いている。ながい、漂流の果
   てに、彼らここを見つけるから。涙と、
   音楽と、人、全てが死んでいるこの瞬間
   なら、形ないまま愛したって、わたしを
   見つけてくれた

文学極道

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