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夢うつつ

選出作品 (投稿日時順 / 全4作)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


足の裏に凍りつく春の痛み

  夢うつつ

(自分を嫌うことは最も簡単な自己へのしがみつきだろうか)
 足先の、あなたと世界の境目に私は張り付く。
あなたを私の物にしてしまおうと爪の間に忍び込み、靴下を脱いだ時、そこに夜を作り出す。
不確かなつながりを信じ、絡め合った足をほどいた時、そこに夜を作り出す。

(

(かがみのようなものだ
生きるということは足の裏に凍りつく春の痛み
)何かを踏みつけて形作られた自己の痛み

)

      *ふと、ゆびとゆびのあいだから、
       暖かな花畑が顔をみせた
       それは、じっと耐えながら、
       今も脱出の機会を伺っている。
                   
)
 私は足の裏に凍りつく春の痛み
あなたの柔らかく艶やかな肌を刺して、靴下を履いた時、あなたはあなたでなくなる。
冷まじい秋の体温に惑わされ涙を流し、足を絡め合った時、
 豊かな花畑が溢れ落ちる。

(忘れないで) 私は
      *足の裏に凍りつく春の痛み


背後 には/雪

  夢うつつ

背後 には
愛する誰かを失った人たちの 雪

ひっそり
世界が薄ら寒くなった気がして
私たちが 体温と呼ぶものは
みんな 背後の 雪です

ひっそり
わたしは
誰かを 抱きしめたい
けして 気づかれることなく
誰かに 体温をあたえたい

ひっそり

いつも きみをみていた

わたしが きみから
ひっそり

ぬけだし

うすら さむさを
まっしろな こどくを
とかして

 冬が

 ひっそり

 ちかづいてくる


閉塞に慣れ過ぎて

  夢うつつ

                罵倒/の言葉を一文字ずつ参照していく/壁に打ちつけられた私の、声は薄弱で/誰かと会話することが/できたとしたらきっと私を傷つける刃物になっただろう/目が覚めたら棺桶の中/で影が足音だけ響く/【私/は名前に封じ込められている】/貼り出された装飾/は私の番号を伝えて(は、いない)/花形、森の風景にうまく溶け込んでいる/言葉が、反転するような世界なら私/

どうしたらいいの

[Q]刺されたのは
[A]包丁が流通していたせいだ
[Q2]刺したのは
[A2]私のせいだ
[A3]私が、生まれる前にいたかもしれないあの
[A4]母の胎盤をずっと恐れている
[A5]もう行くはずもないのに

「わたし、の辞書に/*/文字はない。いかなる文字も、ないですので誰が/誰か辞書を貸してください。そこまですれば、きっと問題は/ない元から、ないはずだった。さようなら。(できれば、ナポレオン以外の人の方が、良い。) ああ

家族 がいた
小さな子供たち は私を貫通し
しかし 棺桶を貫通するまでには至らない速度で
会話している
眺めていても、いなくても彼らの言葉は
聞き取れない
し、容易に理解ができる
自分を埋めるための穴を掘りながらここまで来た
けど私、一人しかいないから分割して
一つずつ丁寧に埋めた
お墓、立てれば立てるほど私の財布はからっぽに
なっていくから、私もからっぽ/に、なって、仕方ないのだと思う
うそみたいな因果 → 破壊できないもの ・物語の中の詩 ・呼吸に含まれる音 ・最弱、
         → だから、私にはきっと破壊しかできない 転生が終わったら子供たちを探してまずは呼吸を、覚えさせようと思う。津波が起きているから、そのなかで棺桶が漂っていて、はじめて命の比重を知った。手紙は一通も流れていないから、/それだけが/私の言葉であった、鍵がかかっていて、きっと開くことはできない。子供たちはあのなかで今も生活しているのか/なんてもう/どうでもよくなっている/ことに誰も気付けない(私も気づいてなんか、いないよ! 完全に新しい/朝が、来つつある/よ!

完全に新しい日の出
           閉塞に慣れすぎて いないからいつだって怖がったまま、私の言い訳、180度回転して何処かへ行ってしまった。朝焼けは、同時に夕暮れだったし、私は、棺桶だったんじゃ「ないのかって」。埋められることがないし、それはもともと実体がないからで、音、音…………振動、肌に直接、触れるから私はそれを知ることになる。開けた風景、花々の代わりに自生してゆく彼らはきっ/と、どこかから来た広い海まで行って遊んでいるから。
唇の表面で水疱がゆっくりと破裂して
白い蒸気に 初めて光の美しさを知った
割れた砂時計みたいに体が散らばって
初めて自分の微かな煌きを見た

なんて

安直   安直 安直
 安直 安直安直   安直 安直
安直   安直  安直  安直   安直
    安直   安直 安直 安直      俺は詩人じゃねえ
安直      安直     安直 安直安直
  安直 安直    安直
安直    安直 安直
   安直
安直

     ↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
           凡庸


(みち、みち満ちてゆく、ゆうれい溶け込んでいた。またそういう声とは、わたし、原型のやわらかくつもる、あいさなくて、いいよ! 生、うつらうつらする、ここは、水平線は、生まれてきたそのゆれ、さらさらともう、過ぎ去らないでいい、のなら、うかんだ、わたしいのちといのち、通しのそのゆ、とうてい、しんの消えてゆくきみのこうこう、とした、滴りつぶ、おちてゆくつなみの中、追憶、知らなくても、いいことだから

処女のままこどもうませてください

)


四季

  夢うつつ

  ―花びらって、飛んでいるから、いつも私
   の体の中に充満してゆく。そのために口
   を開けっ放しにして、そこからみんな、
   蒸発する前に、すぅって、息を吸って、
   別れの言葉を言える、全てが死んでいる
   この瞬間なら
  ―――春は、何も知らないまま生まれた命
    が、指の先端にくっついている気がす
    るから、体の内側から、何もかも咲い
    てしまって、ひっそりと形を、覗かせ
    ている
  ―――――体の中にまた、少しずつ満ちてゆく
     香りだけのまどろみ。まるで、現世
     のように美しいてんごくが、体だけ
     気化させて、妖精たちを小さく囲い
     ながら眠る
  ―――――存在が、もとからできないから、話
     す言葉ぜんぶが嘘だって気づかれた
     まま、花嵐が、巻きあげているの
     は、ただの春と、ただの私たちの死
     骸と、心情
  ―――声に、ならなかったはずの、すべての
    物が、形を持つ季節、世界の輪廻が、
    ここからはじまって、そしてここで終
    わるような、世界に、してください、
    神さま
  ―花びらって、死んでいるから、いつもこ
   こに流れ着いている。ながい、漂流の果
   てに、彼らここを見つけるから。涙と、
   音楽と、人、全てが死んでいるこの瞬間
   なら、形ないまま愛したって、わたしを
   見つけてくれた

文学極道

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