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作品 - 20200130_928_11690p

  • [佳]  切符 - 南雲 安晴  (2020-01)

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切符

  南雲 安晴

控え目に言ったとしても 僕は気を失っていたのだ
その間 切符は軽く風に飛ばされて 僕の手にはすでにない
気づけばそれは遠くまた遠く 線路の上を風に煽られて舞っている

見知らぬ人たちと話すための切符だった
でも 今や僕の意識は覚醒を極めている あんな切符など必要ないくらいに
それに もう 間に合わないかもしれないのだ

行かねばならないのは分かっている
もう間に合わないとしても 僕は確かに到着するだろう
同じ切符を買い直すのだ 金はある

そうだ 思い出した 僕は夢を見ていたのだ
僕は僕の名前を知っていて僕をその名前で呼ぶ女に会った
僕は時間に追われているのを意識していたけれども
快楽からは逃れられなかった
僕は油にまみれてその女を長いこと抱いていた

意識が何だ 時間が何だ それらは快楽の中に埋もれている
しかし快楽は最後には苦痛となるらしい だから
僕は意識を取り戻し 時間の中に帰って来た
実際人間の起き臥しなんぞもそんなものだ

ホームに立ち尽くす僕
見知らぬ人たちと話すためだとて 行く先が社会というものだとて
切符はあまりに小さく軽く
切符はあまりに小さく軽く

文学極道

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