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作品 - 20200127_895_11687p

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うつしみ うつせみ

  たなべ


わけもなく悲しくなることはもうあんまりない。
最小にちかい生活ではわけを見定めることは容易だ。
だいたいのことにはわけがある。
例外はわけがあると信じない精神の内側だけ。
誰かをいじめてみたくなるのも、
壁に穴があくことも、


腐った死体みたいなあなたの愛情。
町の本屋で料理本を買って順番を鬻ぐ。
神棚のように広い舌、わたしは何を載せよう。
道路の模様をつたう幼い規則を世界中で。
返事をするたびにはい、と捲れる吻と犬歯を
たとえてみました。遮光布と街灯に。
星にたとえられなかったのはわたしの弱さ。それから
あなたのおうちを知っていたせいです露台から見えるあの四つ辻、宇宙ステーションの部品みたいな自販機。


形相が花にまけている
記憶の蠢く片田舎の脳裡で。
いったい幾度すれちがったんだろう?
たったひとつの景色が寒天みたいに、じょじょに固まってゆくまでに、
何度ことばを交わさなかったのだろう?
たちのぼる農道に絡まった右手を振ったら
空にはじかれたたらを踏む。

文学極道

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