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作品 - 20190730_323_11352p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


呼吸癖

  たなべ


蕣が硝子のせんいでできてる気がする
もうどうしようもない静脈の揺れ
選挙カーが視えない角を曲がる
ひっぱって立たせようと想ったの、と
静物画のように
牝馬のように
形状記憶合金のように
でも悲しいね、手を放すと倒れて
みんな血で払えば購えると思っている
古くなった調味料で
夏を作る、わたし、
貝がらという季節になって跛行する

あしたからそんなふうに笑わないでね
いまどこかのほねがとけていく
返事をするまえに
返事ははしりだしてしまうもの
きえてほしいと思ってるわ
園芸のほんをかって
この世をどうするつもりなんでしょう
いくらだってわらってあげるよ
あなたが知らないひとだったら

ぼくの見ないところで
波がずっとうごいている
すべての流れる時間を
そのひとゆらで
かぞえたい
星空のしたの仔馬の寝息ひとつで
おさな児の光映りこんだ瞬きのいちどで
はじまることなんてなにもないと
いっても
いくらいっても
だれかの呼吸がそれを否んでくれること
わかってるんでしょう
言葉をゆびさきで千切って
くさはらに捨てるんだよ
明日があるみたいに誤解をつづけて
名づけたなら
ほしもあなたのものになった
しんだひとには
煙もみえずに

文学極道

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