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作品 - 20190717_073_11321p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


消しゴムと靴下

  宮永


靴下であるいている
のを、担任の先生にばったり会って
危ないから靴を履くように諭された。
靴、履くことができないんです
きっとこれは私が私に課した罰だから
どうしても、履けなかった。
ちゃんと家へ帰るから、
明日、説明しますから、
必死な私を
黙って行かせてくれた
担任の先生は信頼できる人です。
今日は朝から早退しちゃったけれど
明日はきちんと学校に行って
長い話を聞いてもらう
話すことは私を楽にするだろうし
そうしたら先生も安心できる
今はただ早く家に帰って
眠りたい

T君の家にクラスの大勢で集まって
T君は私にゲームで負けて
大事にしていた(父親からもらった)筋肉マン消しゴムを
しぶしぶ、でも、笑いながら、
私に差し出さなければならなかった
ただの遊び
次の日、そう、私が早退した朝、
カバンに入ったままになっていたその消しゴムを
教室の後ろのゴミ箱へ放り込んだのを
見ていたN子が非難顔して言った
「T君の大切なものだったのに、
捨てるなんて酷くない?」

きつい言葉を放つとN子はそっぽを向いたけれど
私の怒りはだんだん積って
爆発寸前まで膨れ上がって
N子の頬を何度もなぐりつけるとか
階段から机を投げ落とすとか
そんなことをしないと収まらなくなりそうで
そうなるよりは逃げ出すことにした。
人気のない玄関で内履きを脱いで
スニーカーを履こうとしたら、どうしても
足を入れられないことに気がついて
スニーカーを右手にぶら下げて
靴下のまま歩き出した
きっとこれは罪悪感の
せいだから
靴下のまま
帰っても
仕方ない

思うでしょう?
先生

文学極道

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