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作品 - 20190626_800_11285p

  • [優]  Morning - 湯煙  (2019-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Morning

  湯煙


一月
早朝7:00過ぎ

マンションの
消えた電灯の下
1階の廊下の角
一台の車椅子
太いコードを
差し込み
バッテリーを補充する
赤色ランプが点る

きみはまだ
布団の上
シーツを被る
ドアを開け
部屋の明かりをつけ
先輩とぼくが
挨拶の言葉を掛ける

こんもり盛り上がる山
ぐにゃぐにゃ
うごめく生き物


キッチンに立ち
フライパンを温め
卵を落とす頃
部屋の中から騒がしい
人の声が広がってくる

頭だけをシーツから出し
きみはテレビに向かい
M-1グランプリ
を見ながらゲラゲラ

フライパンを持ち上げ
先輩が焼いて見せる
卵がじりじり
少しづつ朝が
目覚めはじめてくる



カーテンを閉ざした部屋の
半開きの扉が開く
キッチンを這って
バスルームへきみは向かう


裸ん坊のきみの背に
シャワー水が打たれ
流れ
皿の上に
リクエストの
朝食があり


部屋に戻った
きみは
大きな青い桶
に尻を入れて

閉ざされた扉の向こうで
声もなくただ


しばらくして
先輩とぼくが桶を持ち
便所に入る

木のヘラを使い
うんちを掬い
便器に落とす


先輩は掬ったうんちを
便器に擦り続ける

ぼくがヘラで掬いながら
一気に落とす
オー グッドアイデア!と
先輩が
静かに囁く



仰向けになったままの
きみに下着を着せて
ジーンズを履かせ
シャツを通し
靴下を履かせる


床の上でテレビを見る
きみと
うんちと
ゲラゲラ
を余所に仕上げに入る

オーブンを開け
トーストを入れ
ポットから湯を落とし
コーヒーを淹れる

テーブルの上に
三つのカップが並び
焼き上がる


キッチンから運ばれた
目玉焼きを乗せる
ぎこちない若い手を
ゆっくり運びきみは食べる

先輩とぼくと
カップを手にテレビを見る
カリカリと砕かれていく
トースト

カーテンも
先輩も
笑う



ショルダーバッグを掛け
テレビを消し
明かりを消し
部屋を出る

車椅子を運転し
スロープを下り
国道沿いの歩道を
北に進む

角の郵便局で
光熱費の支払いを済ませ
駅に向かう

きみのバンドの話
カノジョの話
横断歩道を
渡る
陽光の中

たどり着いた
地下鉄の
エレベーターに乗り
電車に乗り
仲間たちの待つ
場所へと



優勝は
笑い飯

賞金は
一千万

文学極道

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