ミイラ男だったころ
身体は包帯を巻いてひっかけるための
ものでしかありませんでした
歩けば犬が吠え、親は子どもを隠します
皮膚が引き攣るのでよたよた、していると
見知らぬ人たちが不幸だ、不幸だと騒ぐ
そんなことは知らない
痛みと熱、痒み、この爛れた皮膚
さらにぐるぐると巻けば包帯はすべて
遮ってくれる殻、蛹になりたい
ひととせふたとせ待っても
羽化もしない
身体を捨てたくなって
墓を暴く盗人みたいな
手つきで
包帯をといていけば
そこには何もない
空っぽ、あぁ、みんな包帯をみていたのか
包帯が風にさらわれていくなかで
何もないのに熱と痛みと痒みが
生きている、と訴えていた
最新情報
選出作品
作品 - 20190413_632_11170p
- [佳] わたしがミイラ男だったころ - 帆場 蔵人 (2019-04)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
わたしがミイラ男だったころ
帆場 蔵人