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作品 - 20190406_523_11152p

  • [優]  Needles - アルフ・O  (2019-04)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Needles

  アルフ・O

(吐きそう。)

 「次の離陸まで人工衛星とともに回るつもり。糸の切れた風船のように。獣じみた砂糖菓子の包みをひとつ、ふたつ、発射台に丁寧に重ねて導火線を擦ったら最後、竪琴の弦を切る為だけにのばした爪が爆散して甘く苦く日付変更線一帯の大気を支配するだろう。そしたら貴女を連れてありあまる魂を盾に概念の棲む虚空へ跳ぶ、跳ぶ、滞りなく。邪魔しないでって抵抗されるのは当然解っているけれど、灰になるのが確定している以上、せめて最も有意義な方法で迷路に風穴を開けたいの。理解して。

(あやめる、)

 『これは生きることそのものへの叛逆なんだと認めて、だけどプロトコルなんて存在しない。「君たちは全員閉鎖回路の末端分子なんだ」などとマスターの遺言じみた演説をうっかり聴いてしまってから、瞳の色は一定しないし遠近感は日に日におかしくなってくるし、で、いっそのことこの全身の火傷の痕から古い童話みたいに猛毒を帯びた体液が死ぬまで垂れ流され続ければ幸せなのに、って妄想してる。今やあたしには、殺めるべき相手もいないけれど。彼女に逢いたい。誰よりも速く、叛逆を完遂した彼女に。

(Piece of art,)

 例えばデニムパンツにTシャツ1枚で日本刀を担いで立ち向かっていくような所業。……ってまぁ、実際正装はそれに近いんだけど。臍の下で収縮と発光を繰り返し絶えず存在を主張する蜘蛛の刺青は、もうその色が紅紫を呈し始めてから幾年を経たのか誰も覚えていない。烙印を施した当の雇い主ですら。このビルを不良サンプルもろとも解体している間にも彼は私と共振させるための電子ドラッグを飽きるほど煮詰めていることだろう。方々から強奪したり取引したりあるいは探り当てたりした素材を、常人には理解の及ばぬ調合レシピで惜しみなく融かした結果、寿命は毛ほど延びた程度に過ぎないがQOLはもう誰が見ても嫉妬心で気を失うくらいなのは認めざるを得ない。……帰還してからの新しい皮肉を用意しておかないと。つと眼を伏せ、無駄に潤いを増した長髪を振り払い、耳の奥のホムンクルスに限界までオーバードライブを踏ませる。慣れた金切り声、

(───Injection.)

文学極道

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