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作品 - 20190304_077_11100p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Sylvie with the light brown hair

  深尾貞一郎

──目の前に
木製のドアがあります。
重いドアをゆっくり押すと、
そこにはレンガ造りの、
長い、長い、長い下りの階段が続いています。
ゆっくり、
呼吸をととのえ、
下り始めます。

長い、長い、長い下りの階段は薄暗く、
行く先は、はっきりしませんが、
足元は、しっかりと安定しています。

今いる場所が何階であるのかは分かりませんが、
気分は落ち着いています。
ゆっくり、
呼吸をととのえ、下り続けます。
疲れは感じず、
降りて行くほどに、自然に、なぜか素直な気持ちになっていきます。
降りて行っても、行く先は薄暗く、はっきりしませんが、
足元は、しっかりと安定しています。

そっと、壁に耳をあてると、
なぜか、川のせせらぎの音が聞こえてきました。
懐かしい、
ずっと前に行ったことのある川の、心地よい、せせらぎの音です。

――心地よいせせらぎの音は、気のせいだったのでしょうか。
また、
素直な気持ちで、
長い、長い、長い下りの階段を降りています。
だんだんと
景色が変わってきました。
黄色がかった電球色のひかりが、だんだんと眩しくなってきます。
よく知っている台所に着きました。

気分は、懐かしいような
幸せに包まれています。
グラスに水を注いでゆっくり飲み干します。
ゴクリ、
ゴクリ、
ゴクリ、と
ゆっくり。
とても美味しい水です。
薔薇の香りのような味がしました。

清々しい気持ちのまま、
長い、長い、長い下りの階段を降りています。
降りて行くほどに自然に、
ますます、清々しい気持ちになっていきます。
ゆっくり、呼吸をととのえ、下り続けます。
長い、長い、長い下りの階段は薄暗く、
行く先は、はっきりしませんが、
足元は、しっかりと安定しています。

今いる場所が何階であるのかは分かりませんが、気分は落ち着いています。
今いる場所が何階であるのかは分かりませんが、
ゆっくりと呼吸をととのえ、下り続けると、
薔薇の香りが身体じゅうに満ちてきます。

懐かしい夏の日、
川のせせらぎに、華奢な女の子がいます。
気分は、もどかしいような
幸せに包まれています。

――以下略

文学極道

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