朝をひく
糸をたどって光を束ねる、浸された、どこまでも水平な意識のなかを、沓おとがハッカ色を響かせていきます。もえるように冷光が、撫ぜるとしずむその場所に、陽だまりはかくされた。しらない色としらない色をまぜれば、そこにある。かつてうみだった土地の、記憶がけがれをあつめて、青くなる。指できょりをはかっていた。はっかのようなしずまりに、ひかりが撚れて、文字がうまれた。はっかしていく鳥たちが、においを便りに尾をひいて、弛緩する、時間のじかんを、水平に、いつまでも朝をひき、枝をたよりに、のぼっていきます。
花託
伝えるために、と
繰り返された
「この枝を
練習のための練習を
( あなたのそれと
滲ませて
おおきな花に託された
七つの輪っかは
交換しよう」
まだ仮染めの
うぐいす色を花間に渡して
大空洞
遠心性の鳥たちがこの星を駆け巡る加速度で枝の内部の散乱を裏返し翡翠は影を鎖環に湛えて横断する記憶に自由を同期して捩じれながら継ぎ継ぎに角度の総和を喪う安息に0ばかりを足していく子らのさ青のさなかを行き交うように
群舞
かつて
その痕跡に誘われて
無が咲いていた
その痕跡に誘われて
虚が咲いていた
その痕跡に誘われて
渦が咲いていた
その痕跡に誘われて
石が咲いていた
その痕跡に誘われて
水が咲いていた
その痕跡に誘われて
木が咲いていた
その痕跡に誘われて
鳥が咲いていた
その痕跡に誘われて
光が咲いていた
その痕跡に誘われて
夜が咲いていた
その痕跡に誘われて
原野
火に夜を継ぎ足していた
昨日の今頃に
花弁は鱗に姿を変えていくのだろう
明日の今頃に
蝶は羽片に姿を変えていくのだろう
今日の今頃に
夜に火を継ぎ足していた
この両肩に薄く降り積もるのだろう
ペトリコール
洪水に流された罪を罰と呼ぶのなら
洪水に流された罰を何と呼べばいいんだ
カシューナッツ
「ギムレットを飲むには10年早い」
そう云う先輩には技術がない。
材料がない、と聴こえてきたのは水の言い訳。
今朝から雪が降っていて、いくらか身体に混じってしまった。
「純血を取り戻せ」
と、観客のいないライブ配信と食べ残されたカシューナッツの独白と。
アブサン。毒のない薄荷の靄を集めてグラスに注げば、出来上がり。
融ける氷の弛緩をステアに欠き回し、
グラスの底へ沈められたカイワレを敷き詰めていくモヒートは、
「ジェンガやろうぜ」
微かに青臭い。
白い背を丸皿に、無花の飾りは整列しながら、雪の呼吸を静かに、しずかに。
腹違いの片割れはうずくまり、
下向きに更された、カイワレは青臭さを自覚している。
カシューナッツは上向きに、晒された魂のかたちを自覚している。
罪
光の重さを
教えてくれる
虚無から生まれた
この朝も罰だ
最新情報
選出作品
作品 - 20190212_787_11064p
- [佳] 花 - kale (2019-02)
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花
kale