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作品 - 20190201_576_11040p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ついてくるからついていく

  玄こう



赤子の初泣きとは、はじめて
苦をおもいしったときのようだ
それはまるで昨日のことのようで
苦肉とは、そうして生き初めることを
からだが二度(ふたたび)教えてくれる
ひとたび ふたたび みたび よたび / と
ついてくるから
ついていくのだ

ヒリヒリと痛む肉体が
客車の心のなかを谺する
右半身がこわばり
つり革を固く掴み
わたしはマスクする顔の
暗い影の窓の外には
背中合わせに居合わせた
一人の女の顔の
視線がゆったりと
揺れ動いていた
散開した
その視界は
一度(ひとたび)
消え失せる
homeの列車は
二度(ふたたび)
動きだす

嗚呼、産まれた赤子の
あの泣くときのこと
それはわたしの病苦と
同じ世に産まされた
肉の阿鼻ではないのか

完全に受身状態である
今の私にはそれが一番
ふさわしいのだと
あのとき聴いた肉の呻きが
響動き(どよめき)
肉の心を幾度も谺していく
三度(みたび)、四度(よたび)と、揺らいだ
窓に影る見えない視線がいくつも、揺らいだ






              ‥ …

文学極道

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