身の寄せどころもなく
みだりに浮かされてみる赤ちょうちん
冬ざれたドヤ街で
夜な夜なあおる安酒はグリス臭い
足が冷えれば立ちっぱの床を蹴り
どうにでもなれと隣の店へとなだれ込む
すがるように
感傷の追手から逃れるように
1杯、また1杯と落とし込むたび
はらわたがねじ切れるほどせぐりあげるが
ついぞ視線は定まらず
焦れたコイルは今にも発火しそうだ
すきま風があかぎれにツンと染みる
まっすぐに伸びた日差しがビニールカーテン越し
私の肩に掴みかかると朝だ
しれっと呑まれていたくとも
喧騒があぶり出すアウェー感にますますバツが悪く
横断歩道をいつも通り白線飛ばしで一気に渡る
自分がデカくなった妄想で通りを闊歩するも
すれ違いざまカラスが頭にぶち当たる
打ち下ろす翼の軽妙なラリアット
私はそれだけ影が薄いんだ
そうさ
デカくなったんじゃない
自分が誰でもよくなって
溶けかけの雪だるまと路肩に酔い崩れても
どれにすがっても
正解はないさ
液キャベを求めてコンビニへと向かうが
千鳥足の歩きスマホは
入り口のマットでつんのめったはずみで
腹ん底から機械油をぶちまける始末
時計のゼンマイを巻きながら私はきびすを返した
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作品 - 20190118_318_11012p
- [佳] 変なおじさん - 自由美学 (2019-01)
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変なおじさん
自由美学