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作品 - 20181005_257_10793p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Peeping muzzle

  アルフ・O

 
 
- Sep. 16
銘柄不明のブランデーで
爪先まで記憶を殺し切った翌朝にも
貴女は体液を分けてくれという
ここ数日 決まった時刻 決まった部屋で
「その沸きあがった感情が欲しいの、
自身は其処彼処から
本来が誰のものともつかない念を漂わせて
硝煙に織り込み
繭のように纏うから
ひとときだって正気でいたことはない
あたしは泥同然となった身体を這わせ
蜜に導かれるかの如く首を絞めにいく
アルコールをたくさん染み込ませられるから
天使を独り占めした優越感に
黙りこくってお互い浸っている
唾液はおよそ秩序とは程遠い成分となり
ケミカルな色と香りを撒き散らして
ふたつのピアスの上で冷たい音を立てて
混ざった
窓の外から行進曲めいた
甲高い、スタッカートの効いた声が


“Rrrrattatataaarrrattatataata!”


- Oct. 2
幾ら勧めても
貴女はそのアンティークソファ以外は
受け付けないという
眠れないのだと
あたしはその肘掛の下で
ガスマスクをようやく外し
幸いにもまだ出番のないマシンガンを下ろし
うずくまる
湿度の低い沈黙が流れ
貴女はいつの間にかヌワラエリアの紅茶を
2人分注ぎ
肘掛にもたれて微睡んでいる

(この、双子星を、
「綺麗に断罪してくれるなら、


“Rrrrattatataaarrrattatataata!”


- Nov. 11
「投光器が根元から折れてる。
 もとより主戦場だったから生存するはずもなかったけど。
「弾薬の匂いを落とそうとするとさ、
 不意に海へ行きたくなるよね。
「“Flicker,” “I'm here,”
「……下手なんだからじっとしてなよ。
「結局最後までそんな評価なのね、
「どうせ消えるなら疎まれる幻覚も味方にして、
 離岸流で行方不明になってしまえばいいよ。
「ええ。信じて、信じないで、
 嘘も本当も半分ずつ溶かしてしまえばいい。

((そして、音も無く、))

(パワーコードに乗っかって酩酊
(ゴミみたいな流れ作業をこなせずに
(またダストシュートへ放り込む
『思春期同然の反駁ね、
『必要悪だって、強がってよ。
『スカートの七つ道具でさえもう用済み。
『今はバランスチェアにひっついてるけど、
(アンチドート、と唱えてみる
(貴女が音もなく倒れる
(それも両腕を広げたまま
(ひしゃげて飛び散って
───それでまだ私刑だって喚いてるわけ、
『いつも言ってんじゃん。
 餌をやる道理はないって、
『あーあ、また醒めてく。
『しょうがないよ、これはあたし達ふたりのために
 犠牲になってもらうための、リフレインだから。
 
 
 
 
 

文学極道

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