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作品 - 20180901_486_10706p

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境界が無い

  るるりら

風がすこし強まるたびに
指先が
ちりちりする

八月の八つ手の葉に手を伸ばしたはずだった
生きるものの蒸散 水の珠の美しさに触れようとした指
ふるふると ふるえて まるまっていた ちいさな雫に
ふれようとしていた はず

指先が
ちりちりする
朝日が昇り蝉が鳴いていたが
どういうことわりか
わたしの指は ちりちり燃えていル
手をひろげ
風をからだ
体が飛んでいる 
ひるがえり ひろがり
赤だの黄色だのちりちり火の粉が全身を走り
きれいだ きれいに消えようとしている指先のきれいは
溶けて いル

うらんでいルとか いないとかの区別がつかない
なんもかも みさかいなしに飛んでいル
おんどりあすんどりあ いきりたった目をした
真っ黒な入道雲 
中心軸を おちてゆく懐中時計
いつまでも燃えながら八時十五分

文学極道

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