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作品 - 20180720_733_10609p

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プラネタリウムについて

  芦野 夕狩

プラネタリウムについて 僕が知っていることは あれは偽物の星だ ということだけで
実のところ プラネタリウムの 真ん中には 野一面の 花が咲いていることなんて
知りもしなかった 景色がそっと 息を殺すと 僕の隣では 昨日セックスしたばかりの 
カップルがいちゃついていて なぜそんなことを思ったのかと言うと 僕は昨日セックスをしなかったから
そういうことになるのだ

初老を迎えた とはいえ姿は見えないけれど とりあえずそのくらいの男性の声が プラネタリウムに響き渡る
なにを話しているのだろうか 耳を澄ます こんなところでしたくないよ 甘ったるい吐息が 漏れてくる
じゃなくて 初老を迎えた感じの男性が その声が 無言で 女の股を乱暴にまさぐる ではなくて
花を食べる バッファローの話をしている 花を食べる バッファローは もういないという

それは アメリカの夜空だった たぶん アメリカの片田舎で 花を食べる バッファロー達が
細々と暮らしている夜空だった アメリカの星空は 粘膜のこすれ合う音がする 一発の銃声がきこえる
いや気のせいだった それは隣の女の乳首が弾けた音だった アメリカの星空の ちょうど 蠍座に穴が空く
けどアメリカの星空は 蠍座なんてなくても オープンマインドだった 

(蠍座なんてなくても) カップルの男が 女にささやく それが心地よい響きになって 女は股を広げる
花を食べる キスをする それが愛というものです 初老の男性が呟く 一発の銃声が聞こえる ちがう
正確には僕の脳みそを ひとつの鉛の塊が通過していく音だ ごにゅごにゅ とアメリカの星空の下で 僕の脳みそは1ポンド軽くなる
気が付くと すべての人が 花を食べている キスをする 初老の男性の声で 粘膜がこすれ始める
もうすぐ 夜が明けますよ そんな言葉を 僕はいつまでも待ち続けている

文学極道

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