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作品 - 20180719_706_10606p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


DEAR FUTURE

  

霊安室で君にプロポーズした夜
僕はまだ彼女の胎内で眠っていて
太古の姿のままで夢を見ていたんだ
それは霊安室で君にプロポーズする夢で
手にした花束は球状星団へと接続され
擬人化された時間は痙攣を続けていた

今なら迷いなく世界に発信できる
生まれる前に彼女を殺すべきだったと
フラットな心電図は神からの暗号通信で
解読に必要な犠牲がまだまだ足りない
いつだって死者たちの忘れ物だけは
意外と簡単に見つかってしまうものだ
それは異臭を放ちつつ周囲を侵食して
不必要なくらい存在を誇示するからだ

※誰か窓を開けてくれないか
※どうしても新しい風が必要だ
※僕は彼女の心臓マッサージで
※両手がふさがっているんだ

新聞記事の不幸を次々に切り抜いては
黄ばんだスクラップブックに貼り付ける人たち
無垢な子どもたちが敷き詰められた路上を
彼らはピカピカ光るハイブリッド・カーで疾走する
コンビニでは手軽に宗教が販売されていて
店員は救済をレンジで温めるか尋ねてくる
こんな一日が明日に繋がるはずがない
まだ気が付かないのか墓場なんだここは

僕の夜明けは永遠に引っ掛かったままで
黄昏はクラスの噂話でしか知らないから
動力としての救済が絶対に必要なんだ
すべての悲しい者たちを中和するために
化石になるのを待っていられないから
僕は霊安室で君にプロポーズするんだ

※誰か窓を開けてくれないか
※どうしても夜の湿度が必要だ
※僕は彼女の首を絞めていて
※両手がふさがっているんだ

僕たちの未来の想い出は未開封のまま
今も過去という薄闇の底で凝っている

文学極道

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