霊安室で君にプロポーズした夜
僕はまだ彼女の胎内で眠っていて
太古の姿のままで夢を見ていたんだ
それは霊安室で君にプロポーズする夢で
手にした花束は球状星団へと接続され
擬人化された時間は痙攣を続けていた
今なら迷いなく世界に発信できる
生まれる前に彼女を殺すべきだったと
フラットな心電図は神からの暗号通信で
解読に必要な犠牲がまだまだ足りない
いつだって死者たちの忘れ物だけは
意外と簡単に見つかってしまうものだ
それは異臭を放ちつつ周囲を侵食して
不必要なくらい存在を誇示するからだ
※誰か窓を開けてくれないか
※どうしても新しい風が必要だ
※僕は彼女の心臓マッサージで
※両手がふさがっているんだ
新聞記事の不幸を次々に切り抜いては
黄ばんだスクラップブックに貼り付ける人たち
無垢な子どもたちが敷き詰められた路上を
彼らはピカピカ光るハイブリッド・カーで疾走する
コンビニでは手軽に宗教が販売されていて
店員は救済をレンジで温めるか尋ねてくる
こんな一日が明日に繋がるはずがない
まだ気が付かないのか墓場なんだここは
僕の夜明けは永遠に引っ掛かったままで
黄昏はクラスの噂話でしか知らないから
動力としての救済が絶対に必要なんだ
すべての悲しい者たちを中和するために
化石になるのを待っていられないから
僕は霊安室で君にプロポーズするんだ
※誰か窓を開けてくれないか
※どうしても夜の湿度が必要だ
※僕は彼女の首を絞めていて
※両手がふさがっているんだ
僕たちの未来の想い出は未開封のまま
今も過去という薄闇の底で凝っている
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選出作品
作品 - 20180719_706_10606p
- [佳] DEAR FUTURE - 无 (2018-07)
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DEAR FUTURE
无