流れていった言葉は私のものではなくて
膿を出すための言葉
森をかたちづくる言葉とか
朱の消えた舌を乾す
砕けた縁石
残った物でつくり上げる
電話のコール音の中を歩く人
月が欠けるからだ
溶けたリボンを渡して
朝になるまで気温は下がるけど
月を誰もいない路地で
壊そう
期待も蔑みもいらない
夜とか朝とか
そのような移り変わりがあるだけ
事故で出会って
黒髪を絵の具にした
Enterを押す前の空白
いや
籠められた影
時間がずれた過去に
土中で雪が孵った
しろい
寄生虫の
川
目だけで眠っている
蓋を開けるほほえみ
色褪せた虫
生きた
音
ビニール袋が口に入り込んで
ひとりでに弾ける音
から生まれた死んだ
蟻
抱き枕を殴るコオロギたち
除いていく
生きながらにして忘れてやる
一人の夜
最新情報
選出作品
作品 - 20180512_187_10436p
- [佳] (流れていった言葉は私のものではなくて) - 田中智章 (2018-05)
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(流れていった言葉は私のものではなくて)
田中智章