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作品 - 20180203_235_10223p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ビール瓶と比喩とゾンビ

  泥棒

「今からビール瓶で殴りに行きます。」



好きだから
君のことが好きだから
今からビール瓶で殴りに行きます。
愛の雨が
どしゃ降りの午後に
傘もささずに
思いきり殴りに行きます。
ゴッ!
君は気絶するだろう
頭から鮮やかな血を吹き出すだろう
それでいい
何も間違えてはいない
君は横になって
読みはじめたら止まらない
私の詩を
血が流れるように読んでくれたら
それでいい
ひとつの恋が終わる
ガッシャーン!
ビール瓶の破片は
恋模様のように散らばるかしら
嘘が反射して真実になる時間
ひとりよがりの夕方五時
愛してます


「わけのわからない比喩」



雨が降ったって槍が降ったって
カレンダーはいつも同じだろうね
火曜日みたいな月曜日があったって
やることは同じなら
なんだか変な感じ
右にいる人も左にいる人も
同じような顔している
そか、
そもそも君に届けたいものが
僕にはないのかもしれないね
それでも
暗い空に浮かべたいものが
わけのわからない比喩では
君に悪いなって思うんだ
言葉なんて信じないように信じてほしい
形あるものは必ず何かに似ているって
それなら言葉だって思想だって
同じだろうね
どこかの街で
すれ違うように出会いたい
君と僕しかいない世界
悲しい予感しかしない世界
そこで
偶然みたいに
右でも左でも真ん中でもいい
春に咲く花を見つけなきゃ


「あなたがゾンビになっても」



死んでしまいたいなんて
あなたは
たまにつぶやくけれど
雨の日に
予定が変わって
おいしいコーヒーを淹れてくれる
/
春に咲く花になりたいと
ガード下の草が
みんなにうたっているようね
意味なんてないのに
誰にも届かないうたなんて
存在しないらしいわ
//
私は超高層ビルの向こう
焼けおちる夕陽に噛み殺されて
ゾンビにでもなりたい気分
///
好きな人も
知らない人も
みんな
驚かせながら
噛み殺したい気分だよ
////
楽しかった思い出が
川のように流れていく
悲しみは
流れないまま
ずっと胸の中にあるから
私には
共感というものが
ひどく汚れてみえるのです
/////
私のためだけに書かれた詩など
存在しないから
他人を他人のまま
好きになれるんだよ
あなたがゾンビになっても
たぶん大丈夫
//////
血を吐きながら笑っている
あなたの笑顔が
今日よりも
圧倒的に
明日の空を青くする

文学極道

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