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作品 - 20180202_208_10222p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


悲しいことはいくらでもある

  鞠ちゃん

クレイジーな
猫おばさんは
丸く太った背中を見せている
変人と呼ばれながら猫たちに餌をやる彼女は
小学校の頃はなかなかにお転婆の少女だった
サッカーを男の子に紛れてするのが得意だった
彼女は父親に裏切られた
彼女は初めての男に裏切られた
彼女は才媛ではなかった
彼女はパートタイマーで働き小さく稼ぎ
世界から背を向けた
彼女は子供をあきらめた
血を流すような心で
彼女の子供は猫たちだ
最後の砦として
彼女は猫たちを守る
たった一つの仲間として
言葉を超えて
獣臭のする毛皮の肌のぬくもりが
愛なのだ
おまえはこれに勝てない
彼女は言葉を捨てたのだ
その裏切りに心を冷やして
猫が病となり首をかしげて彼女を慕う

”私の猫が歳を取っておばあさんのように酷い咳をするの
苦しそうで吐いたりするの
自転車のカゴに載せて
病院に連れて行く道で悲しい気持ち
老いた猫に歌を歌ってやりたい
るるるるる、るるるるる…
一緒に生きたね
まだだよ、まだだよ”

この凍える冬に
かじかんだ世界に
無口な猫たちを
その忍耐と存在の灯火が
危なげに揺らめくのを見放せない
そして彼女は猫の爪で穴あきのほつれた洋服を着ながら
猫たちに有り金をはたいてしまう

文学極道

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