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作品 - 20171214_993_10095p

  • [佳]  天体 - 本田憲嵩  (2017-12)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


天体

  本田憲嵩


   ※

揺らめく瞳に湛えた
微笑みの奥から
さらに微笑みが湧き出ているかのような瞳
滾々とした
透明度の高いその水面の煌めきは
その青い瞳を通して視る世界に
含有されている
金色の星々を意味しているのか
いずれにせよ旺盛な好奇心によって翔びまわる
その青い水鳥は今
飾り窓の中に生えるドレスの樹木に憩う
その樹木に咲き誇っている
洋裁の赤い薔薇を煌かせている

   ※

その距離はほとんどない
対等という名の
おなじ高さにある
鼻の岸壁と鼻の岸壁
一つのレンズを通したように見つめ合う
青い瞳と黒い瞳
砂糖を塗したような覚束ない異国語と
練乳で精製された流暢な母国語が
蔓草のように絶妙に絡み合って
一つの渦巻く小銀河を形成してゆく
鏤められた小さな星星の花
その母音の豊富な微光
そのいくつもの煌めきと陶酔によって
天の川で膨張してゆく明日
乳製品の今日

   ※

強い香水のかおりがスパークする
昨日の情事を煌めく流星の速度で巡る
その頭髪の金星の強い反射率の残光に
かんきつ類が混じって拡がる鼻腔で摩耗してゆく
余韻のリラグゼーション
記憶の燃える小隕石が幾度となく観測される度に
スパーク・スパーク・スパーク!
そのたびに冷たく新発見される
二つの瞳の青い水星
不意にせまり来る
唇の薔薇のような炎星
そのように昨日の情事が次の情事に更新されるまで

   ※

ギリシャ風に白い天体が浮かび上がる
惑星の眠りから目醒めて
閉ざされた睫毛の黒雲が裂かれ
双子の青い衛星が鮮やかに観測される
その時を待つ
不意にレースのカーテンをひるがえして
朝の穏やかな気流が今
その長い睫毛を
吹き払うべき雲としてではなく
黄金の麦穂として
揺り籠のようにやさしく揺らしている
彼女の瞼の奥はもう一つともう一つ
それら青い星だけはでなく
今まさに窓の外で
黄金に輝く
あのひとつの太陽
陽が地平に沈み
やがてこの地球という惑星の約半分が
漆黒のネグリジェを纏うとき
彼女のもう一つの
もう一つの輝く眼は銀の月となる

文学極道

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