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作品 - 20171204_814_10074p

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風ハラ

  

空き缶を、蹴飛ばしたような青空に、飛行機雲は、思い出の先端から、もやもやと徐々に薄れ、青へかえってゆく。米粒よりも小さな、人見知りのおっさんの、喜びや哀しみを乗せて、置いてけぼりの遺恨や、知らず知らずに残してしまったマーキングを、拭い残してやいないか、臭いを残してやいないか、風に尋ねながら、歩いてゆくおっさんに、憂いの心は似合わない。生まれた日に旗を立て、続けてきた記念は、もうこの青空の、飛行機雲のように消えればいいと、願いながら、自分というものが、貴方にとって、なんでもなかったという、せめてもの証に、オロナインと絆創膏を、澄みわたる青空の、切り傷や擦り傷に処方して、お大事に、なんかちょっと図々しくないですか?

文学極道

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