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作品 - 20171201_683_10061p

  • [佳]  一途 -  (2017-12)

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一途

  

朝からおにぎりの中にひとつだけ赤味がかったのが混じっている気がしていた。昼になってそれは紛れもなく鮭の身の塊だと判明した。箸でふたつに割ってみると中から米粒が少しでてきた。この身はぜんぶほぐしたのか聞くまでもなく他のおにぎりの具はすべて塩鮭だった。漁港の市場で干物を買い七輪で炙り酒の肴に防波堤で釣りをした。あまりにも釣れないので時間はゆっくりと過ぎた。夕暮れになってはじめて竿先がぐいーと波に引き込まれてゆくような感覚がしたので糸を巻くと貝殻が引っかかっていた。夜はその市場で買ったカニと調理道具一式を戸建て式のラブホテルに持ち込んだ。カニの捌き方をスマホで調べカセットコンロと土鍋で茹でた。昆布で出汁をとり茹であがったカニの手足を毟り野菜と一緒に鍋に投げ入れ蓋をした。桃色を纏う電灯は妖しげな蒸気の下で身をほじり、味噌を舐め、甲羅を啜り、最後は卵で綴じあわせた雑炊で〆。密室の固く閉じられた窓をあけると潮風が吹き込んできた。旋回する冷気に生臭い部屋は正気をとり戻し、暗闇が波音一面に拡がっている。

文学極道

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