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作品 - 20171110_205_10022p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


ゆれる、かげ

  

黒い、鳥のような形をしたものが
空の中ほどで燃え盛っている
そういえば太陽はどこへ行った?
清冽な蒼ではなく
曇天の灰色でもなく
衰弱して色褪せた空で
黒い、鳥のような形をしたものだけが
青白い炎をあげている

ふと気がつけば
街は瓦礫の山に
僕たちは薄暗い影に
なってしまっていた

(何が起こったのだ?

   今さらそれを聞いて何になる?)

●お前たちが
●鼻で笑っていたことが
●現実になったのだ
●空想上のグロテスクな獣が
●いきなり目の前に現れて
●お前たちの喉を食い破ったのだ
●念のために言っておくが
●これは比喩だ

(では死んだのか
(僕たちは?

   だとしたら何だというのだ?)
   今までだって生きていたか?)

すべての問いかけは
虚しい答えに中和され
やがて僕たちは諦めた
それだけは許されていたから

●失われた
●元に戻った
●旅に出た
●帰ってきた

(どうでもいいね

   そうだ、どうでもいいのだ)

遠くで音楽が聞こえる、と
かつて誰かだった影が
僕の隣で囁いた
いったい誰だったのだろう
いや、それ以前に
僕は何者だったのだろう
そう思う頃には
もう音楽の意味を忘れていた

曖昧な影である僕たちは
埃のたちこめる瓦礫の山の
あちらこちらで揺れている
そうだ僕たちは
それ自体が墓標であり
次に訪れる者たちへの
教訓を秘めた道標であり
決して浄化されることのない
濁った大気の底で蠢く
新種の絶望生命体なのだ
そんな奇妙な確信が
それぞれの間を瞬時に伝い
世界中に林立する僕たちは
ひときわ激しく身をくねらせた

文学極道

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