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作品 - 20171106_101_10009p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


家 その他三編

  田中恭平





その声は少し歪んでおり
脳のなかにいるかのようだが
どこまでも追いかけてくる、
ハニートーストをかじっていても
ホット・ミルクを飲んでいても
偽りの童心が浮かぶのみ、
逃げ込んだトンネル
幽霊が、
幽霊が怖いんだよ

世界が薬を飲み干して熟睡、
悪意は寄せては返す波のよう、
郊外の町中なのにね
いっそ放り込んでしまえ
自分自身を
ダダイズムから禅へ
禅から個の全へ
自己暗示で宜しい、
あたらしい遊び
本気、
本気の遊び、
最近眠れないぜ、

──ききあきたシーディーがあれば売って下さい
そんなに神経が鈍麻な奴がいるのか?
今日もノイズ、にヘッドバンキング
見つめているんだ
逃がさない奴を
そいつに近づくと
そいつは泣いてしまうんだ
俺は消えると取り繕って
ミルキー・ウェイ・キャンディをやるんだ
やれやれ
これで家族だなんて。


再訪するあなたへ

妖しい、妖しい、
最期の煙草は
煙突として
白いミルクの蒸気を吐き、
みんな妙に
怖れているみたい、
わたくしもその内に含み。
気にしていた一日鳴りつづく警報機が止まり
安堵の溜息を吐いても、
なにかしらの進行が
止まっただけなのだ、
アーメン、
スパゲティを平らげて、
すこし元に戻してしまうことの、
儀式はどこかで
密やかに行われている、
痛みを、
痛みを。
アーメン。
聖痕の、
額から肺にかけて、
飛び立つ勇気は、
理想のみ、
で、
歯痒い。
クイカイマニマニ歌いつつ
ホームに還ってきて、
くれて、
ありがとう。
さびしかったんだ。
きみの、
いない五日間。
塔の中で循環していた。
 

 ELEGANCE

幽体に近い、
この体は、声は。
朝の活力を求める、
枯葉の滴を原因として。
たかぶる、
闇夜激しく
愛しあった
夜と曙は。
ミルクの中から
熱を帯びてくる、
コップはとうに下げられてしまって、
天使の翼は本当は汚い。
あちらこちらを飛んでいるので。
というのを、
視ている目は
路傍に置かれており、
花を愛している。
花に、毎日、ラヴレターを
書くほどに。
すべての音を消して、
アールグレイティーに神経を注ぐ。
神経は弛緩していたのだが、
張りつめる。
動悸がする、
薬を服す。
飲んだ薬は天上で回収される、
それもきれいなものではない。
朝焼けがきれいだ、
旅人もきれいだ、
これを憧れというのでしょう。
どこへもいけないものになってしまって
旅は
こころの中。
嗚呼、背骨より天へ逃げる諸々の感情たち。


 サムバディ・タッチド・ミー

いのちが先行して歩いていく
俺は冷えつつそれを追いかける
天国まで行くつもりだろうか?
帰るつもりだろうか?
いざこざを
愛するひとをそのままにして
俺は、

いのちが先行して歩いていく
風のようなスピード、
流行歌を歌いながら
さっきまで
肩を並べていたのに
たった一言に
いのちの態度はキレた、
どんどん歩くスピードが速くなっていった

ブロック
ポケットに紙
電子タバコ
もやもやしている煙がしろく光る夜
俺は俺を見失い
途方に暮れていたら
花に水が滴って、きれいだった
鳥が鉄のような声を上げ、
ハーモニカを吹きかえそうとしたらなかった、
ああ、哀しみという伝染病
あなたの写真を眺め
祈りを捧げた
祈りは聞き入れられ
俺は路傍に一人じゃなかった
あたたかいのか、つめたいのか
確かに手が触れた
誰かが俺の背中に触れていた。

文学極道

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