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作品 - 20171101_916_9986p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


秋台風

  maracas

チューブから虹色の光がしぼり出された。虚ろなメロンジュースが飛び出してくる。イチゴ色の文字列が螺旋階段を上った。もうすぐ空き箱の雨が降るだろう。震え始めた手のひらを温めながら執拗に追いかけてくるイベント関係者から逃げる。誰もいない連絡通路を歩く。白い不安が足元を温める。水蒸気はぐるぐる回り24時間以上彷徨い続けているイベント関係者めがけて収束する。ぽろぽろ落ちるピアノの鍵盤。眠りたい気持ちが空からぶら下がっている。黒い石畳の道を歩くと年老いたイノシシの悪臭が鼻腔に染み渡る。ぼろぼろになる髪の毛と歯。あらゆる農耕放棄地をうろつき回り放棄された農作物を貪り食うイベント関係者が虚空を見る。透明感のある唇と迷路のような国道を周回するパトカーの赤色灯を混同する。震える手がピアノを叩くと誰もいない岸辺にぼろぼろの打楽器が打ち上がる。腫れた手が心臓の柔らかな毛を撫でた。目の前の人間に手のひらを見せるとその人間は占い師に変化した。戸棚の中の甘ったるい外国のお菓子が占い師の脳内を占領した。ろくに食べていない宇宙飛行士が宇宙空間から落っこちる。宇宙空間から宇宙空間へと動いた。ピアノは腐りかけている。白い壁紙の凹凸をみずからの歩く迷路に見立てた彼の脳みそのように。おもちゃを渡してくれない子どもに向かって砂をかけて遊ぶ。浮遊する微生物が砂の中で笑っている。空間に満たされた流動しない世界。ふっくらとしたものが炊き上がった。真っ暗なショッピングモールの摩擦のない床の上をせわしなく移動している大量のイベント関係者。永遠の恋人のもとへ行くと彼は知らない人となって笑っていた。楽しそうな予感が耳に聴こえない音とともに近づいてくる。占い師はその存在を売却しその占いは海のように静かになった。色彩の微粒子に没入しみずからをかき混ぜることが可能であるのは選ばれた少数の人間だった。真っ暗なショッピングモールの中でみずからの過去に干渉することができなかった彼はまったく関係のない人となって消えた。
「イベント関係者」


馬上から失礼します。
この坂を登るのは大変でしょうね。
なにしろ壁のようですもの。
宗教の違いによって
タイミングの違う空から
馬が落ちてくるそうですよ。
わたくしは坂を登らずに
ここで見ていますことよ。
「坂」


沿岸部というものは、青く、そして、緑の水辺だろうと予想していた。実際の沿岸部は、寸分違わず、その通りの場所だった。白い蛸が現れたり、固まりの蟹が消えたりした。もうすぐ楽しいパーティが始まる。ボロ、ボロボロと、楽しい機械音が空から聞こえ、楽しさを撒き散らす機械が、沿岸部に到着した。青と緑の水辺に、青と緑の邸宅がある。そこの主人が招いた客が、機械音を伴ってやって来るのだ。沿岸部は、青く、そして、緑の水辺であり、哀しき岩礁とも言うべき静けさのなか、ちろちろと海水が流れ込んでいる。空から見た沿岸部は、非常に美しく、大いなる海を切り取っていた。
「沿岸部」


橋は燃えている。燃えているので渡れない。別の橋を探す。人で溢れかえっている。群衆をかき分けて橋を渡った。山を登る。竹の根元を掴んで傾斜を登る。道へ出た。鏡を見れば僧侶となっている。血の色の袈裟。清浄な精神。脳みそがはち切れる。おっと。僧侶は真空になった。
「真空」


赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。六角形の穴に落ちてずいぶん時間が経つ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。六角形の穴に落ちてずいぶん時間が経つ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。赤だよ。黄色だよ。六角形の穴に落ちてずいぶん時間が経つ。
「穴」


尻の穴を連続で叩くと、気圧の変化を感じる。
「穴」


波乗りしているこの感覚をどう表現したらいい?ギターのジャンとベースのラブがおマヌケな顔してこっちを見ている。オレは知らぬふりをする。オレは犬を放り投げたか?波は砕け散った。無秩序な運動がちりぢりに弾けた。破断する波だ。涙じゃないんだ。ジャンは色褪せた赤。ラブは馬鹿みたいな白。おマヌケな顔してこっちを見ている。オレは知らぬふりをしている。
「波乗り」


獣の匂いのする部屋に連れていかれた。黒く細長いドアを持ったエレベーターに乗せられ、おそらく25階、不自然な動作で、エレベーターを降りる。獣の部屋は迷路であった。入口と出口しか無い迷路。黒い服を着た人間は、不気味な笑みを浮かべながら、最初からそこに存在しなかった。ぼくは取り残された。取り残されたぼくは、髪が伸び続ける人形のイデアを内蔵しながら、夜が明けて朝が終わるのを待った。エレベーターは壊れながら到着した。真っ暗で細長いエレベーターに乗り込み、青白い顔でエントランスへ向かう。枯れたダンスホールのようなロビーは不気味な真紅色であった。黒い服を着た男女が一組存在し、ぼくに普遍的な言葉を投げかけた。そのあまりの普遍性に、ぼくは思わず身体をよろめかせた。すると黒い服を着た男がぼくの身体を支え、ぼくの夢がさめるのを見守った。
「夢」

文学極道

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