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作品 - 20170805_149_9822p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


リッサウイルス

  アルフ・O



「やっちまえと空砲が轟く
 ボイラー室の吹き抜けで
 反響音に首を締め上げられる
 懺悔に足るってことらしい
 中空からスコールに襲われながら
「それであたしはいつしか
 腕をクロスしてTシャツを脱ぐ、
 「彼等にそんな方法を
   覚えさせられたんだ、
不名誉なんかなくて
ただ、戯言が
宙で潰れるのを眺める
(洒落たロンサムスピーカー、
「相対化なんて言葉では生温くて、
「マラカスの音が止まない。
「だから、
 あの星ごと叩き落としてやるの、
「何を買い被ってるのか知らないけど、
「ねぇ、逃がしてよ、
「悩むのが上手いのね。
「片眼でこっち見ないで。
鐘と共鳴して、
デブリを撒き散らして、
けたたましく笑う
サイレン、

crack, crack,

心底めんどくさいなぁ、と呟く
がれきのでたらめ
叫び声を掬い上げるに値するかと自問して
旧校舎をふと、仰ぐ、が、
「何を期待していた
「何を渇望していた
口にするには耐えがたくて
圧縮されればいい、と思考を止める
少し油断すれば才能なんて
中身のない単語に置き換えられるから
「貴方達にその自由など与えない
枷の繋がった両手を見下ろす
淀む水底
胸の識別票が鳴り
明日はまた、二枚舌で着飾る手筈を
(吐き捨てたってどうせ菓子屑
 都合よく下がった体温を言い訳にして)
(幾重にかけたフィルターを
 すり抜けた砂粒を手にして
 何が視えたと宣うのかしら)
「仕掛けが間に合わなくてごめん、
「それは手首の導火線とか、そういう類?
「さっき、眠り姫と擦れ違ったの。
「多面体で昨日を占いましょう、
「瑠璃色は敢えて選ばないで。
「種の群れが薄く淡くタペストリーと化してく。
「ネグリジェを引きずりながら、
「壊れたハンドカフス、
「木星まで連れてってよ、
「蛍が2本の指に灯る。
「馴染まないパルファン、
「バルコニーからピアノ線で繋いで、
「アヴェ・マリアを口遊む、
「lamb.
逆流する、
調理前の心臓と、
(そう、たとえばこの地下街跡に、
 今こそヒールを叩きつけてやりたい、
(分解した光に磔にされて、睡れ、
 二度と醒めないように。
所詮そんな生き物なの、
だから、噛み砕いてあげる、
「此岸の淵こそ我らが舞台、って、

crack! crack!!
click? crack!!!

傷痕に呼ばれて、
赤い靴に急かされて、
お願いだから、始めさせて、



睨んでいた。隕石が降ってきたらいいのにって願ってた。本当に呼ぼうとして丘に駆けあがってなけなしの灯を振り回したりもした。羽虫のもがく様。つられて存在しない翼をばたつかせる。数十年ぶりのスコールが来るなんて予報は当然のように外れて。相変わらず湖に沈んだナイフをぐるぐる二人で探し続けている。でも、平気なの。それがお互いの身体から奪ってできたものだなんて、彼等は絶対知るはずもないから。

**

睨んでいた。浴室から綾を成し五線譜と棘の群れを往なして飛散する羽根を。両翼は朽木に挿げ替わり泥を飲み込んで散大した瞳は自ら爆破した羅針盤の切先を縫い合わせてゆく。円を描く時。歯車は淀みなくピアノの白鍵をばら撒かせながら扉は頑なに閉じようとしなかった。刺青に埋もれた彼の指が非常通話のプラスチックを破る。Darryl、触らないで。傷と誇示するには浅いって云うなら。塒を巻く花。筆の海を泳ぎ切るのに酸素が足りないって云うのなら。なんてこと。なんてことなの。もう既に疑いようもなく血は凍りきっているのに。どんなに探しても墓守は見つからないまま、LED灯の下に繋がれてあたしたちは二度と動けなくなるのだろう。だからさよなら。
……でも、本当にさよならするのは、ずっと先の話だけど。そのときはもっと、困らせてあげる。ふふ。



「―――報いかしら。
「キズの舐め合いよりもっとひどいのかも、
「まだ、傘はさしてくれないのね。
「Happy birthday. まだ、弾除けになってくれる?
「......今日のコトは忘れて、

文学極道

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