太陽の輪郭が今日はやけに際立っている。西の空は地平線の上で待っている。空に浮かぶまるが一つ降下すると他のまるもつられて降下する。太陽光線が植物の葉の中を通過する。紫かつ橙色の空が沈んでいく。時計の針が膨れて誰かの手がそれを潰した。反射的に光球が破裂した。
子どもたちが唱える念仏に合わせて立体的に踊ってしまう観葉植物が街の方で人気らしいが、どこの街で売っているのか誰も教えてくれない。葉っぱの模様を、穴があくまで観察することもできない。
植物の、地中にある茎のことを、地下茎という。大気中の水蒸気量が極度に増大した昨日、植物は地球史上初めて夢を見た。植物に寄生する虫たちも、ほとんど我を忘れていた。光速で移動する概念が地下深くから放射され、不完全な迷路の中で立ち止まっている太陽光と衝突する。
まるい観覧車が四角になっていて、太陽みたいだ。太陽のせいで職を失った若者たちが、食べるものを探して穴から這い出てくる時、子どもたちが唱える念仏に合わせて立体的に踊ってしまう観葉植物が受精する。街から街へと走り抜ける若者たちは、静止画のようだった。西の空が沈まないように監視を続ける人たちは、紫かつ橙色の空を見て、わざとらしく感嘆する。白い三日月が、まるい太陽の三分の一ほどの大きさで空に貼り付いている。日没という現象は、すぐに始まりすぐに終わってしまうということが、この地域でもどの地域でも知られている。
紫かつ橙色の液体というものが存在していたとして、液体がすべて蒸発してしまうのにどれだけの時間を要するか計算せよ、という課題が出された。言葉の定義について調べたり考えたりするよりも、夜明けを待っている方が楽だった。
植物の茎を使って文字を刻んだ粘土板が崩れた。のどが乾いた人たちは太陽に背を向けて歩きだす。結果は原因より容易で、原因は存在より容易であるということが確認された。地球の表面を雑に転がることでしか前に進めない球体があり、その転がり方の雑さに世界中が驚嘆している。球体に非があるのでも、地球の表面に非があるのでもない。問題は相対的だった。
情熱がもてはやされる時代に、子どもたちが唱える念仏に合わせて立体的に踊ってしまう観葉植物は上手く適合した。この地域でもどの地域でも葉っぱという葉っぱが踊っている。子どもたちの舌の細胞の一つ一つが、空気に触れるたび隆起する。概念という概念が、細胞という実体をもって、おぞましいほど生きている。舌は口腔の闇の中に隠されていた。
最新情報
2017年08月分
月間優良作品 (投稿日時順)
- 太陽 - maracas
- (無題) - いかいか
- 草花ノート あとがき - 北
- ニレの木でハトが鳴いているんだね - 阿怪
- (無題) - いかいか
- 厩舎に散る種の名は 収穫 - 鷹枕可
- 恒心 - 祝儀敷
- 火葬 - 深尾貞一郎
- (遊泳の為の)リハビリ - 田中恭平
- ファウル、年末の。 - bananamwllow
- 黙すること - kaz.
- 開放 - 霜田明
- 変身 - 芦野 夕狩
次点佳作 (投稿日時順)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
太陽
(無題)
この、工都には、
葡萄しか実らない、
「林檎は神の物語を呼び込んでしまうから」
血のように、硬い、
骨を
油で満たし、
汗は、
雨をよぶ、
工都は、
秋に燃える、
君はいつ燃えるのか、
はやく死ね
天使よりもはやく
草花ノート あとがき
僕の悲しみは暴れ馬のようにのたうち回っているので、
手綱を雑草に委ねました。
雑草はアスファルトの裂け目や、線路の上や、荒地にも、
どこにでも生えているので、悲しみの痛みを癒すにはもってこいです。
少し目線を落とすだけで、彼ら雑草にはいつでも出逢えます。
とても身近に居てくれるので、僕はほんとうにいつも心強いです。
だからとうぜん雑草に対して感謝をしているのですが、
気高い雑草は僕に謝られるのを何時も拒みます。
人間が付けた名前で呼ばれることについても、「なんだかなぁ。」
と思って首を傾げているようです。
又、写真を撮られるのも嫌がっているようです。
それでも僕は花期に入ると写メを撮ってツイッターへ、
名前と一緒に画像をアップするのですが、このときツイッターに
貰ったファボのことを、雑草に知らせても、「なんだかなぁ。」
という感覚を抱いているように思います。
とくにその写真がデジタルカメラの場合は、とても嫌がっているようで、
彼らの言い分によると、そのデジタル画像は永遠に再現だそうです。
それよりフィルムカメラに収め、生命をデジタルのように再現するでなく、
思い出は再生を繰り返し、そしていつか色褪せて尽きろと言うのです。
僕がバイトで仕方なく草刈りしているときも、「許してな。」
と心で念じながら草刈機のスロットルを全開にしながら謝ると、
「なんで謝られる必要があるのかなぁ?こちらとしては謝られると、
許したり、許さなかったりしなくてはならないではないか?そんなの面倒だ。」
と、謝罪も門前払いされてしまいます。その他にも、日差しの強い日に隣に座り日陰を作っても、
光合成の邪魔だ!というような顔をされます。
そんな雑草ですので、僕を操る手綱さばきを想うと、甚だ僕と雑草は相性が悪いように思います。
だけども僕が雑草に手綱を委ねる理由は、これは植物全般に言えることなのですが、
植物を枯らせる、もしくは殺すことは神様でもできないからです。
なぜなら、雑草は誰かに枯らされたり殺されたりする前に、自分の意思で枯れ、
自分から死ぬからです。
ですので花屋の鉢植えの植物であっても誰も枯らすことはできません。
「わたし、すぐ枯らしちゃうの。。」なんて言っている人は、
そうとう酷い思い上がりです。ですから傷つかないでください。
雑草は、他人に罪を被せません。だから僕は安心して、
のたうち回る暴れ馬の悲しみを、手綱が切れるその日まで雑草に委ねているのです。
ニレの木でハトが鳴いているんだね
本を閉じた
それから身の回りのものや
家具類を
すべて売り払った
その金で細かい借金まですべて精算し
当面の食費と交通費を残した
田舎のあばら屋は風通しのよい
道場の
ようになった
雨戸と玄関を開け放し
庭を掃いた
井戸から水を盛大に汲み上げて
座敷と縁側を雑巾がけした
パンツとシャツを手で洗い
昼に乾くのを待って
裏山へでかけた
滝の水は冷めたく頭も心臓も胃袋も
凍るようだった
信仰心もないのに、なみあむだぶつを
唱名し、瀑布にうたれた
滝壺からあがり
三十年間使ってきた菜斬り包丁を研いた
水面から反射する光がまぶしく
目眩いがした
夕方、イノシシでも一撃で倒せるほどに
磨き上げた菜斬り包丁を縄で巻き
腰にさげて
下山した
途中、村のコンビニで
オニギリと即席麺と缶詰を
買った
それから三日間、十帖の居間に座して
過ごした
腹が減ると缶詰や即席麺を食べ
夜になるとそのまま横になって目を閉じた
星や月の光も虫の音も
慰めにはならなかったが
熟睡した
最後の日も爽やかに目覚めた
注文した新調の夏服上下が
新しい帽子
新しい靴と一緒に
届いた
菜斬り包丁を丁寧に新聞紙で包み
懐に忍ばせると
わたしは出かけた
我が家から
600キロほど離れた地に遠いむかし別れた
恋人が住んでいるという
そのことを
最近彼女が出した詩集で知った
たいそう評判になり新聞でも取り上げられた
本はずいぶん売れたそうだ
そのひとの住む町のバス停に降りると
鄙びた宿をとって早めに眠った
明け方
案内を乞うて玄関戸をあけると
彼女は暗い上がり框の床板に正座していた
まるでわたしが来るのをずっと待っていたかの
ようだった
「やっと、ですね」と
彼女はいった
わたしは懐から包丁を取り出すと
目にも止まらない速さで
彼女の心臓を刺し串いた
一瞬で絶命したようだった
唇を強く結んで悲鳴もあげなかった
わたしの両肩を掴んでいる手をはずし
刃を引き抜くと
噴き出した血がわたしの顔に散った
手ぬぐいで彼女の顔の汚れを
きれいに拭きとってやり
髪の毛を整えてやった
それから、「まるでコリーみたいに」走って
地元の小さな警察署に出頭した
署内は大騒ぎになり
現場へ急行した刑事がすぐに戻ってきた
わたしは
その場で現行犯逮捕された
留置場へ続く厚い扉が背後で閉められると
それまで戸外でぐーぐーぽーぽー
と苦しそうに鳴いていた鳩の声が
とつぜんやんだ
(無題)
花のように咲いた、
人の死を頼む、
雨のように、
泣く人の、悲しみを、
頼む、
今、僕は、サフランを、
摘みながら、
ブエノスアイレスの
冷たい、路地裏で、
歌われるであろう、
歌を、描こうとして、
必死だから、
僕の詩には足がないから、
逃げ出すことを知らない、
僕の詩には腕がないから、
戦争にも革命にも行けない、
僕の詩には死がないから、
本当の悲しみも、喜びも知らない、
だから、僕の死を頼む、
悲しみを知らない、
生まれたばかりの、
詩を、
眠いから止めたわ
厩舎に散る種の名は 収穫
誰か踏む
街角の影
哨戒機が巡邏する
天窓より見下す
花束を燃えゆく
第三面会室の門扉
その人体建築
昼を乾く向日葵
瑠璃藍青の蜘蛛窓に檸檬が繭の花が繋る
睡眠薬を
白砂糖の睡りを
疑り
草花を翼と見紛う
褥の影像が延展される
慈善と慈悪
その別ちがたき
黄薔薇の肖像写真に
銀錆腐蝕の花被は磔像を跪かず
修道、葡萄樹を厭う
総てを市民権を略奪されては
踏み拉かれた
水晶体内の巧緻修飾その衣類を
偶像と看做す
唯物的想像下に於いて
精神病たる私は
飽く迄も種的逃避に外ならない
薔薇と遭遇、
巡礼者が帆立殻を
偏執的片眼鏡に観察する時
静謐静物の像と看守は
一握りの塩粒の整流濾過壜を電燈として
書簡には
綺想幻想動物の骨格が
普遍鉱物の繊細なる機微を寧ろ恩讐より隔絶し
機械史の乳房は
蒼醒める胸像に死の赦しを
懸架し已まず
暴風霰打つ邸宅建築の丘に
私達の髑髏が離れてゆく様に
恒心
300万もの脛毛の荒野
300万もの脛毛の荒野
300万もの脛毛の荒野
酸っぱい空気充ち満ちていた箱たちが
汗だくの肉溜まり又は骨皮を閉じ込めていた箱たちが
その重い戸をついに封しきれなくなってしまった
Spam! Spam! Spam!
尿詰めのペットボトルと大量の画像たちが
全壊した戸からブリュリュリュリュリュと漏れ出すと共に
最低な男たちが荒野に満杯となる
くんかくんかでもしたら鼻が壊死してしまうほど
汚物の如き野郎共が垢を荒野に塗りたくる
キター! キター! キター!
禿ちらかした頭皮を松戸市の民家にこすりつけろ!
カラフルな鼻糞を虎ノ門の賃貸マンションに貼りつけろ!
路線は蜘蛛の糸のよう2783方向に延ばされていき!
複写された肖像画の大群が西や東をも汚染していく!
産まれた3Dモデルをまっ裸にひん剥いては!
素直な気持ちを曝け出してぐねぐねお人形遊びだ!
茶色な酋長が谷川の両端で跋扈し続け!
大気の辛さは高い疲労を誘発する!
ダチョウの死体は墓の中でも炭酸飲料をかけられて!
陰では飴がばらまかれ人気なのはもみあげ味!
存在しない施設が地上のあらゆるを占めていき!
存在しない爆弾がはた迷惑に爆裂する!
現代詩よりシュールな事実は追求され続け!
どこにでもしゃしゃり出てくる聖書にまとめられる!
うおおおおおおおおおおおおおおおおお!
空色何色うんこ色!
オウフWWWフォカヌポウWWWコポォ
この醜く愉快な祭典の中で
パカパカお馬のロゴマーク入りふんどしで踊り回っては
良識をスキージャンプで超えていく男たち
荒野は不可逆なほどさらにボロボロだ
世界中へコミカル下品な嫌がらせを拡散せんと暴れ続ける
この卑猥で低俗な男たちを止める者は誰一人としていない
だって
俺は嫌な思いしてないから
俺は嫌な思いしてないから
俺は嫌な思いしてないから
火葬
公園の錆びた、
遊具のような人の性を洗う、
花梨のように、
咲く人の、憎しみを、
洗う、
今、僕は、雨を、
つかみながら、
多摩ニュータウンの
ベージュの、団地で、
燃え盛るであろう、
手足を、描こうとして、
歌うから、
僕の身体には西がないから、
微笑むことしか知らない、
僕の身体には右がないから、
つめたい泉にもアムステルダムにも行けない、
僕の身体には身体がないから、
永遠の青も、馬のたてがみが示すものさえ知らない、
だから、僕の身体を洗う、
昨日も知らない、
何でもない、
自分を、
(遊泳の為の)リハビリ
熱っぽい体、──煙草止めたんだ、
何も想起されて現れない空を飛んでいる、
自由は寂しさに似て。
クーラーの螺子が
水を発し、
ギュルギュル回転する音。
ブロウ、するマイルス。
私は濡れていて一人だ。
分解できるくらい一人だ。
湖水。
カワセミの白と青が反転する。
湖水は空だった。
私が倒立していたから。
樹をよりどころとして
よりどころは樹しかなかった、
嗚呼、父なる樹よ
呼んでも黙し
揺れているだけの樹よ
枯れる樹の
枯れる前の樹よ。
母はこわいと言っていた。
だから地面が心臓を握りつぶした。
私は
電話の向こうのあなたがこわかった。
──うん、煙草止めたんだ、
冷夏じみた午後に、
「枯葉」が鳴っている、
僕は中空で眠らされている水か
脚がムズムズする、
足らない鉄分
欠損は世界の至るところにあり光っている。
きれい。
八月の郊外の夜
マンションの廊下、
また蝉が死んで落ちていた
ファウル、年末の。
ーOssu. Kaze wa naotta kai?
Mata rennraku kure tamae.
ーKoega mada dennodayo. Noroi ga utagawareteru.
ーHonnmakaina!?
Noroi!? Shinnpai sugirude (namida)
Netsu toka wa nainonn??
ーTadano kaze datoomounemkedone. Netsuwa mosagatte taichowa iinen. Socchi no chosiwa do?
ーKocchiwa nicchimo sacchimo.
Daigaku kibbishiikamo. Yarudake Yaruga.
Koe hayaku modoruyou nenn wo
Okutte okku.
電子メールを書き写していたら
2015、年末が暮れようとしており
ああ、逃げ切れるのか
昼間はエンドレスに続くと思える
ガキ使特番の再放送をみて、ケタケタだらしなく泣きたくはあった
不意に真面目な振りをして
他人の尻を触ること
それと、他人のメールの文面
を許可なく筆写すること
そのどちらがよりポルノめくのか
論争を待たない事柄ではある
だから、こっぴどく
他人たちには叱られるだろうが
nenn wo okuru
のも
noroi
に対抗するのも
具体的な術が分からず
半分途方に暮れ
半分ほんきでおそろしくなって
このノートに書き写しつつ
2007、4月
都知事選を反芻している
これが2015、
唯一立ったバッターボックスでの結果であった
黙すること
光のように眠い
迫撃砲という言葉を
あなたは軽々しくもルビに塗る
彼方から
過ぎ去っていった記憶を眺める
ときのようなコントラストで
時間という人生を巻き戻す
かたつむりのように目を瞑り
世界からアンテナを引っ込めて
アカウントに鍵をかけるときのような
静かな音がした
その耳元で
開放
一
生まれたときからその娘のことを知っていた。
毎年春が来るたびに僕は年齢をひとつずつ更新していった。それでも僕は僕がゼロ歳のままの僕であるような気がしていた。
それは毎朝目を覚まし、関係意識を取り戻すまでのほんの数秒間に存在する部屋だった。
その部屋の中に存在できるものが「不在」である他に何でもないことは、僕がこれまで考えてきたかぎりでは確かなことだった。風が吹けばカーテンは膨らみ、コーヒーカップは机の上に置きざりにされていた。その後反復する僕は、むやみにカーテンを引き、昨晩飲み残したコーヒーを手に取った。そして、その娘は現実の僕やぬるいコーヒーがそうであったように不在ではなかった。
僕の恋人が年齢をひとつ重ねるたびにマイナス方向へ歳を重ねていくらしかった。
二
社会が個人的な言葉を遠くすることがわかった時から個人的な言葉で話し考えようとするたびに、僕は僕自身からプラスの方向へ遠ざかり、それと同時にマイナスの方向に遠ざかるようになった。それは身体という実空間を僕が今存在しているこの中心で置き去りにするために、身体へのイメージが顔面側へ、そして同時に背中側へ、脱け出して酸欠のように色の薄い距離をとるのだった。君を嫌いになることと社会を嫌いになることが、まるで同じことのようになった。
だからその日僕は部屋でぼーっとしていた。なのに部屋にはそこら中で「在ること」がたかっていた。僕はまたその娘を思い出していた。在ることにたかられるのは僕らがいないからなのではないかと思った。すると僕ら関係同士の間には明らかな物性が刻まれていた。
三
「誰も君を愛せない」とそのときだれが言ったんだろう。誰かがそれを君の妄想と決めつけるには明らかに君の表情に刻み込まれていた。どうして解読できない言葉で刻み込んだんだろう。でもその言葉が僕らの言葉のルーツであることは確かだった。僕はまるで既知のものであったように、その言葉をたどたどしく読んだのだから。
君は君はかわいそうだから、みんながかわいそうに見えるのだと言った。僕はたしかにそうだと思った。君が一番かわいそうにも見えた。
君が僕の想像のつかないところで存在しているところで君への愛情が水風船のように膨らんだ。だから君の僕への愛情は僕にとっては存在しなかった。ただ君はそこに存在していた。静止した時間が君の顔から表情を洗いさると君の顔は既知の言葉だけで書かれていた。
四
表情を拭い去れば君の顔を読み下すように街の中に散らばるすべての顔も読めるはずだと信じていた。そうしなければ君という意味はきっと一つのところに決められていたはずなのに。かわりに僕らはお互いというところに安住しはじめたのだった。お互いという場所だけが僕らに唯一共有された場所だった。それからの僕らは自分の顔ばかりが街中に散らばっているのを流れる玉音放送の中で見つけつづけた。
五
ときどき距離は水温のような接触に変わって僕らはそれを反復した。許されている限り完全に支配されているのだと歌いながら垂れて水は土壌へ染み込んでいった。僕らは支配することを認知できなかったから憧れていたけれどそれよりも目で見たものをなりふりかまわず羨望することで自己を維持しようとした。自分から遠ざかる自分を取り込むためにそれ以外のものから距離を取ろうとした。それが自己自身に属さないことを認めようとすることはすなわち羨望視することだった。それを切り離すことで取り込もうとするものを僕らは人格と呼んでだからそれを敬い特別視することにした。
六
マイナス五歳のその娘は笑いながら言葉を忘れていった。固定された顔を持って部屋の底で僕に愛情を示させようとした。
どうして君を無力に仕立て上げようとしたこの目がそれをあの娘へ疎外して僕は無色の君へ接触を試み始めたのか。
すべての反復行為は性的行為でありすべての性的行為は反復行為であった。破壊を信じない破壊と感謝を信じない感謝のやりとりで、接触は僕らの暮らしをどれだけ優しく織り上げていたことだろう。
透明な夢の中で僕は僕の羨望を誰もに正確に伝えるための言葉を覚えたいと臆面もなく話していた。
七
無条件であることが僕らの満足の条件であったのに暮らしは幾つもの条件を僕が欲望したもののように突きつけた。今日幾つかの孤独死の中でどれだけマイナスの年齢が死んでいっただろう。「幸福」は物性行為を意味する言葉だと注ぐ日光を構成する粒子の動きのなかに見た。為すべき仕事さえあればと歌った啄木を僕は思っていた。誰もが維持するために働いていたのに維持されているものを変化させるためのように働き続けてきた。
八
未だあの戦争が避けられえたものだったかのように日本の夏が決められようとしていた。今年の花火大会は大雨で中止。集まった人たちは駅前で長いこと雨が止むのを待っていた。僕は部屋にいて何もすることがなくて蝉の声より青い空を作り出しイメージしてみようと思った。未来が条件付けられたもののように透明な電波をジャックしていた。君の顔を思い出さなければ世界には同じ顔しかないことを恐れていた。
九
この詩がここで終わっても僕の暮らしは生の無条件性を忘れずにいられるだろうか。僕は君との距離を不在と置き換えて表現したことを悔やんでいた。
食わずに生きられないならば条件なしに食うべきだ。働かずに食えないのならば条件なしに働くべきだ。この類の理屈はどちらの方向へ連れて行っても僕らを条件で縛っていなかった。僕らを縛ってきたものはすべて現実の関係だったから。僕は欲望された世界の中で君と関係し始めた。その時部屋は開放されていた。長かった歴史は亡きものにされたようにみえた。細かいガラスの破片が床に散っているのが見えた。僕は時間の中にいなかった。
十
一方向へぞろぞろと家にたどり着こうとする集団は糸のように繋がれて見えた。その糸が僕を縫い合わせる代わりに長い眠りは汗だくの僕に変化した。そのとき窓は開け放たれ鳴き止まない蝉の声が仰向けになった僕の身体を太い腕で夜の底へ押し付けた。風が吹きもう一度僕が忘れ易くなるためにそれから少し長い時間があった。
変身
河は燃え
赤く染まった月をそのみなもに滑らせ
葦と井草に囲まれて
小さく開く苦悩がある
オオカナダモは呼吸をしている
月の光彩は河をほの赤く染め
染めながら流れて
湖面に開くかなしみがあり
鈴虫の声にみなもは揺れて
その声は夜をしつらえ、ただ揺れないものは
空の月ばかり、冷たい貌をみなもに映して
潰えていく命をわらいつつ
そのたびに揺れる
帰り路
アスファルトにへばりつくガムみたいに
流れる月を見ていたのは
狼男が見た夢の続き
ある夜、彼は狼ではない夢を見る
それは狼の姿で、鈴虫の声を聞きながら
そして満月を見上げる
役割を終えた交差点の真ん中で
何かに変身してしまうことの
どうしようもない宿命を呪って
なにものでも無かったものたちの
変身をつかさどるもの
リリオーペの花壇の隣で
仮面ライダーでもなく
ウルトラマンでもない
そんなポーズをとることを
余儀なくされたものたち
湖面に揺れるかなしみの数だけ
そしてどうしようもなく
変わっていってしまうものたちわらって
月は濁流に呑まれて、今夜も
たくさんの人を変身させたまま
姿を隠してしまうのだ。かたち
それがなんであろうと
そうであるかたちを押し付けて
そうであるかたちを許して
僕はなにものでもありたくはなかった
それは自分と許しあうことが出来ずに
湖面を揺らし続けるものの傲慢かもしれない
僕はなにものかであることを恐れて
オオカナダモの呼吸を真似て
その光を見つけ出せなければ良かった
濁流に呑まれて
見えなくなった月に
焦がした心を持て余しながら
缶コーヒーの蓋を開ける
やがて昇る朝日に
その光彩を
もう一度預けるための
顔の無い朝を待つための
夏色
いつも通りの朝。どこへ行くでもなく、何をするでもなく、僕はただ外を眺めていた。何の変哲もない窓枠は、時に僕の人生を映し出す。耳障りな蝉の音がオープニングを飾る。
小さな子供がはしゃぐ姿を、この歳になってまで羨ましく思う。あの頃の僕には与えられなかったもの。
体を動かすのが苦手だった。外に出るのは学校くらいのものだった。鉛筆を持ち宿題をする毎日に、初めは嫌気が差していたが、それも気が付けば苦ではなくなっていた。
ふと汚れた窓ガラスが目に入る。それだけの事に苛立ちを覚える。
あの日もそうであった。
騒がしい音で目を覚ました。母が近所迷惑な声で喚き散らし、それを宥めるのは、父。
今となればどうでもいい事だが、母が僕に父だと言う男を、僕自身は家族だと思った事がなかった。
その男は母を抱きしめる。母は次第に落ち着きを取り戻し、僕に気が付く。涙で顔がぐしゃぐしゃな母と目が合う。急に顔が凶変する母に怯える。ここで泣いてはいけない。母に背を向ける。部屋の一角。唯一使う事を許された場所。今にも死んでしまいそうなくらい暑い窓際でも自分だけの場所。掃除される事のない窓ガラスは黒ずんでいた。
窓を開ける。生温い風が肌に触れ、不快だ。いつから窓を開けていなかっただろうか。妙な気分に襲われる。
子供達の声がする。誰かを待っているようだ。はしゃぐ子供達の元へ走る若めの男。高らかな足取りで。彼が足を止めた時、子供達は消える。彼が俯くと、差し伸べられる手。彼は顔を上げる。とても細く、今にも崩れてしまいそうな体つきをした中年女性は彼に言う。
「ごめんね。」
彼は泣いた。泣き続けた。
窓枠では収まりきらなかった感情が、エンディングをかき消した。
units
大きな星空は三つ
小さな星空は 無限個あった
きみたちのうちのひとりが
それは 可算無限?
と 尋ね
三つの大きな星空が
分からない と 答えた
また別のきみは
星空を数えるための単位 を つくり
わたしに 耳打ちしたから
わたしのなかにまた
小さな星空が生まれた
きみたちは
あらゆる方法でわたしに
小さな星空を埋め込んでいく
だからわたしは
星空でいっぱいなのだ
きみたちは三つの大きな星空
の 境界 を
同値関係で貼り合わせ
ひとつの《かたち》にした。
きみたちは それを
名付けようとはしなかった
いつも
「あれ」
と 呼んだ
「あれ」
三つの大きな星空では
《波》が 絶えない
から 小さな星空へ届けることが
きみたちの仕事だった
届けられた《波》は
音楽や
絵画になる
そのあわいできみたちはみたされ
漂う くらげのようだった
きみたちはどこから来て
どこへ行くのだろう
きみたちのうちのひとりが
消えてしまうとき
結ばれた 三つの大きな星空は
一瞬
《かたち》で なくなり
《波》が
《波》の まま 漏れ
残されたきみたちのあいだを
ゆっくりと伝播していく
流出
伝えたいことを見つける前に
言葉が流れ出てくる
やつらが「病気」と呼ぶ現象だ
心のバルブが壊れているらしい
よく晴れて風が強い日には
油断すると空へ落ちてしまう
そんな錯覚と同じだという
たいていの場合はその後で
あふれ出た無意味な言葉たちを
溜め息まじりに片付けることになる
あまりにも情けないから
何とか意味を見出そうとする
とまらない悪循環というわけだ
この薄い壁の向こうでは
多くの言葉が流通している
たとえば政治や差別や貧困といった
実にくだらないものから
愛や神様や戦争といった
本当にくだらないものまで
でもやつらは言うのだ
それらには価値があると
あるように思えると
では、なぜ「病気」と呼ぶのか
奴らの中では矛盾しないらしい
でも実際はどうなのだろう
意味があると思われた言葉が
実は空っぽなことも珍しくない
それもまた錯覚なのだろうか
もしかしたら言葉自体が
幽霊のようなものなのだろうか
結局はおれもやつらも
何一つ変えることができず
誰一人救えないというのに
今日もまたこんな風にして
世界中の「病気」なやつらの口から
情けなく、だらしなく、果てしなく、
言葉は流れ続けているのだ
リッサウイルス
「やっちまえと空砲が轟く
ボイラー室の吹き抜けで
反響音に首を締め上げられる
懺悔に足るってことらしい
中空からスコールに襲われながら
「それであたしはいつしか
腕をクロスしてTシャツを脱ぐ、
「彼等にそんな方法を
覚えさせられたんだ、
不名誉なんかなくて
ただ、戯言が
宙で潰れるのを眺める
(洒落たロンサムスピーカー、
「相対化なんて言葉では生温くて、
「マラカスの音が止まない。
「だから、
あの星ごと叩き落としてやるの、
「何を買い被ってるのか知らないけど、
「ねぇ、逃がしてよ、
「悩むのが上手いのね。
「片眼でこっち見ないで。
鐘と共鳴して、
デブリを撒き散らして、
けたたましく笑う
サイレン、
crack, crack,
心底めんどくさいなぁ、と呟く
がれきのでたらめ
叫び声を掬い上げるに値するかと自問して
旧校舎をふと、仰ぐ、が、
「何を期待していた
「何を渇望していた
口にするには耐えがたくて
圧縮されればいい、と思考を止める
少し油断すれば才能なんて
中身のない単語に置き換えられるから
「貴方達にその自由など与えない
枷の繋がった両手を見下ろす
淀む水底
胸の識別票が鳴り
明日はまた、二枚舌で着飾る手筈を
(吐き捨てたってどうせ菓子屑
都合よく下がった体温を言い訳にして)
(幾重にかけたフィルターを
すり抜けた砂粒を手にして
何が視えたと宣うのかしら)
「仕掛けが間に合わなくてごめん、
「それは手首の導火線とか、そういう類?
「さっき、眠り姫と擦れ違ったの。
「多面体で昨日を占いましょう、
「瑠璃色は敢えて選ばないで。
「種の群れが薄く淡くタペストリーと化してく。
「ネグリジェを引きずりながら、
「壊れたハンドカフス、
「木星まで連れてってよ、
「蛍が2本の指に灯る。
「馴染まないパルファン、
「バルコニーからピアノ線で繋いで、
「アヴェ・マリアを口遊む、
「lamb.
逆流する、
調理前の心臓と、
(そう、たとえばこの地下街跡に、
今こそヒールを叩きつけてやりたい、
(分解した光に磔にされて、睡れ、
二度と醒めないように。
所詮そんな生き物なの、
だから、噛み砕いてあげる、
「此岸の淵こそ我らが舞台、って、
crack! crack!!
click? crack!!!
傷痕に呼ばれて、
赤い靴に急かされて、
お願いだから、始めさせて、
*
睨んでいた。隕石が降ってきたらいいのにって願ってた。本当に呼ぼうとして丘に駆けあがってなけなしの灯を振り回したりもした。羽虫のもがく様。つられて存在しない翼をばたつかせる。数十年ぶりのスコールが来るなんて予報は当然のように外れて。相変わらず湖に沈んだナイフをぐるぐる二人で探し続けている。でも、平気なの。それがお互いの身体から奪ってできたものだなんて、彼等は絶対知るはずもないから。
**
睨んでいた。浴室から綾を成し五線譜と棘の群れを往なして飛散する羽根を。両翼は朽木に挿げ替わり泥を飲み込んで散大した瞳は自ら爆破した羅針盤の切先を縫い合わせてゆく。円を描く時。歯車は淀みなくピアノの白鍵をばら撒かせながら扉は頑なに閉じようとしなかった。刺青に埋もれた彼の指が非常通話のプラスチックを破る。Darryl、触らないで。傷と誇示するには浅いって云うなら。塒を巻く花。筆の海を泳ぎ切るのに酸素が足りないって云うのなら。なんてこと。なんてことなの。もう既に疑いようもなく血は凍りきっているのに。どんなに探しても墓守は見つからないまま、LED灯の下に繋がれてあたしたちは二度と動けなくなるのだろう。だからさよなら。
……でも、本当にさよならするのは、ずっと先の話だけど。そのときはもっと、困らせてあげる。ふふ。
*
「―――報いかしら。
「キズの舐め合いよりもっとひどいのかも、
「まだ、傘はさしてくれないのね。
「Happy birthday. まだ、弾除けになってくれる?
「......今日のコトは忘れて、
半ズボン 他短詩七編
「字源」
ある日テレビを見ていると
アスペルガーと思わしきとある女性タレントが映っていて
こんなことを言っていた
「人」という字について
こんなことを言っていた
「人」という字はヒトとヒトとがささえあって
できているのではなく
あれは弱者(短いほう)が圧しかかる強者(長いほう)に押しつぶされて
なりたっているのだと
いっしゅんその番組内の空気が凍りついていたのが
とても印象的だった
それはもちろん間違いで
ひとりの人間が脚をひらいて立っているすがたが
字源なのだと
謂われているのだけれど
それはぼくには紛れもない真実のように思われる
真実だからこそ
あの場の空気が凍りついたように思われる
自分の書く詩もこのように
真実で
「人人」を凍りつかせるようなものでありたい、
と、
せつにせつに思うのだ
「ネイル」
女が尖った長い爪に
変な色のネイルしてて
男がその女を口説くために、
「お、ソレ良いね!」
なんて、
ウソ、
ウソばっかり!
男が女との性行為の最中に 、
「妊娠してもかまわないよ!」だなんて、
断言するけど、
ウソ!
ウソばっかり!
男が女と再婚するために
女の連れ子のことを、
「君と同じくらい愛するよ!」とか、
「実の子のように愛するから!」なんて、
またもや断言するけど、
もちろんウソ!
ウソばっかり!
世のなか、
ウソが多いから生きづらい、
ウソつきは、
ヒットラーのはじまり!
「祈り」
理不尽な労働のあとの
黄ばんだ腋臭くさいシャツのように
あるいは劣情のあとの
精液の黄ばんだティッシュのように
あるいは決して取ることのできない
白い便器の黄ばみのように
女たちが
思わずその目を逸らす汚物のように
――私の詩よ、
いつもまぎれもない真実であれ
「容姿」
巨大なトロール族の女王が
棍棒を片手に
こちらに向かって歩いてくる
その口からはヨダレを垂らし
そして舌を出し
その貌はいかにも凶暴そうだ
この人の性格も
その歩んできた人生も
とても凶暴なものなのではないか
と感じてしまう
ついつい見た目で
その人を判断してしまう
ついつい見た目で
その人のすべてを決めつけてしまう
「排出」
ぷりぷりぷり?あるいはぶりぶりぶり?固体と液体の中間物が排出されるときの擬音表現のひとつとして、すなわち糞を排泄するときの効果音として。人はこれらの言葉を発するとき、その唇と唇の隙間から千切れた小さな糞を放(ひ)り出している。
「時の果実」
カチ、カチ、カチ・・・、
時の果実を秒針が絶えず喰らう、噛み砕いてゆく、そのわずかに滴り落ちた汁をぼくらの耳が口となって啜るのだ。そのあまい汁を。ぼくらの心臓は脈打つ。
そうして秒針からも我々からも放(ひ)り出された糞は過去である。
「モジャ公」
「わたしは常にあなたたちの下半身とともにある。
「半ズボン」
たくさんの秘密を分け合おうよ
魔女のように下卑た笑みをいっぱいに浮かべながら
沸きたつ好奇心に駆られながら
たくさんの楽しいことを
たとえば男子トイレの
鍵がかかった個室のドア
となりの個室の壁の上から
こっそり覗いてみると
それは校長先生だったときのような
思いもがけない楽しさ
門
っていうか殺人事件で
すよ、これは。アナ
ザースカイを観て
いながら夜の何
時かわからな
いというの
は、いや
半端な
こと
で
はな
い音楽
瀬という
やつを潜り
抜けてきた密
閉でしかない、
渡るようなさんず
いに在庫がなかった
と聞き糺した他時間♪
のトバリを開閉するよ
うな海兵隊の存在感
をより増し的に割
り増し的に割り
箸的に掴み取
られた空気
の流しそ
うめん
を啜
る
♭あ
るいは
最初から
音楽への道
が存在として
閉ざされていた
ということか♯支
部給付ならぬ四分休
符ならぬ渋ハウスのダ
ストに揉まれた荒濤の
際に並々ならぬ存在
感を増していた♪
増し増し増し増
しましましま
しましまし
た♯しま
しまし
まし
ま
しま
しま島
島島樹木
樹木園樹木
医樹の休符に
浚われて(浚渫
府としての斑入り
の葉に垂れ流すよう
に♪わりかし面白い音
楽を聴いているね君は
聞い♪聞い♪聞い♪
聞い半島♪紀伊半
島♪ているね♪
統一された統
語法がわか
らずにい
るとい
う湯
を
♯て
んでば
らばらな
末梢神経の
こずえに攫わ
れるこころをた
らしたみの実のな
らぬ木を♭ヘルシン
キの減る神姫♪シャー
ク、シー・シェパード
、エコフェミニズム
、ブラック企業
、モラハラ、
パワハラ、
テクノロ
ジーハ
ラス
メ
ント
を晴ら
す、♪♪
♪♪淡々と
語るのは統率
のない分水嶺だ
ということを知ら
ずにして♪♪波間を
松浦ギター驟雨♯波間
の国、が匡へと変貌す
る形態学の携帯学出
現の予感がした、
♪♪♪♪♪五線
譜に五連続の
ご連絡を差
し上げま
す。♪
えい
え
んが
みつか
らない♪
ズダダダー
ン、スーダン
、ダンス、埴輪
のそれがキリキリ
舞いに仕舞うとき、
時刻はどことなく首を
かしげ氏は価値を失う
》その喪のときがど
ことなく首をかし
げ死は家畜を喪
う》概念は響
き渡る声の
ように煩
く鼻水
を垂
ら
♪す
》と♪
いう♪こ
と♪が♪馴
る♪鳴る♪成
る♪なると♪渦
♪しお♪の♪か♪
が♪する♪いまどき
誰もかしこも詩人だ♪
どういうことなの♪ど
ういうことなのか♪
足袋♪して♪他時
間をタシュケン
トする多種検
討♪♪厨房
の犒いを
見たか
♪観
音
堂の
響く様
を見たか
♪ガルボ♪
ガルフ♪シャ
ンディガフ♪を
のみくだすわたし
だけがわたしだけで
なくあまいあいまいの
あじをためすのだった
ということだけまで
はしられないまま
のみちのくであ
ーぎゅめんと
がさんぜん
とさくれ
つする
さく
ら
つき
のみじ
んこにし
ょーとして
みせためだま
やきのかるびど
んいりかるぴす♪
一首の審判が告げら
れて♯おわるおわーる
おわーるどわーふおわ
ーふおわふおわふるひ
とびとをわすれえぬ
ひとびとをわすれ
ずにいるだけで
♯まとりょう
しかがまと
りょうし
かたる
ため
に
♭せ
んげん
したへい
くとせんげ
んした♭へる
しんきもへるし
んきくさい♭ささ
るふらっとがササル
フラットガササルフラ
ットガササル♭♭♭♭
♭♭♭♯♪ひとつの大
陸間弾道シャープに然
さるので♪はなく♪そ
を♪うやま♪いたま♪
えを♪かいた♪いっし
ゅの♪100Vの♪え
んそくを♪♪このから
だすべってころんでこ
ろたんたんこぶつくる
こぶしのみのだいべんの
おとが♪ぷぷっと♪ふきだ
すふじみのぶんかいさん♪き
ょうはそこへ♪いくらもってい
けばいいですか♯ディスプレイに
は背中の筋肉が反映されている。送
られてくる喪失感が被曝のために悲鳴
をあげる……♪あらよっと転ぶサイコロ
の謎を謎として謎するように謎る♪なぞる
♯流る♯ながる♯なぞる♯♯ながる♯♯♯な
ごる♯♯♯♯なくる♯♯♯♯♯なぐる♯♯
♯♯♯♯なく♯♯♯♯♯♯♯なる♭なぞ
ながなごなくなぐなる♭なぐるふぁる
♭色彩のファンタジー♭という表現
が♪となって刺さる♪引っ掻くよ
うに♪急停車♪してみせるだろ
う♪♪♪♪♪四つ足動物の聖
籠に性愛を欲求するような
旦那を見ずにはいられな
いイラマチオいらない
流れ作業♪1を上に
弾いて♪音符を捻
り出そうとする
が楽曲はない
♪無の音楽
♪♪無農
薬♪む
のお
や
く♪
無のオ
ルガン♪
にふれ♪テ
イル♪ずっと
♪トモダチ♪♪
ダカラ♪♪♪シバ
リヲトク♪♪♪♪勅
語、はいっ!♪ぼくら
はみんな認識病♪闇の中
眠りの瞬間
眠りの瞬間
こころが散らばっていく
からだが自由になる
もっと 選ばせてほしい
散らばったこころの破片を
手にとって歩く
眠りの瞬間
水が波うつ
偶然を使って遊んだ
透明の汗
広がることに身をまかせていた
眠りの瞬間
旅先の路地に
ぷらぷらと 入りこんだ
孤独などなく
見知らぬ家の庭を見て
なつかしんだ
眠りの瞬間
思考が映像となって見える
それは水面で
鏡のように けれど
揺れて とどまることがない
眠りの瞬間
言葉が からだを離れた
言葉が からだに馴染んだ
公園
焼菓子割れの影に、硝子の落ちる声を利用し、幼女達は横目で示し合わす。
靴形滑り台に、肋骨作りの硬い鞦韆、牛肉色の鎖から垂れた振子家の中では一種類の四人家族
が長方形の食卓を囲み、あらゆる、過去形を喰らう。四人は複製画みたく同じ顔をし、〓でありながら口だけを静かに動かし合う。
部屋の隅には古い銅製枠の鏡台がありそこに示し合わす幼女らが写り込む。
「あれは常芝居だよ」
一人が言う
「余りが居るみたいね」
一人が言う
食卓から少し離れたところに、四人とは顔の違う女が生えている。
片側の眉は剃り落とされ、外斜視、髪を後ろで一つにまとめ、大袈裟に何度も唾液を飲み込む女は鏡台の、可動式の鏡を何度も動かし、小さな窓から差し込む光を反射させ示し合わす少女達に当てへらへらする。
女はその差し込む光の正体を知らない。
雨の秋刀魚
頭痛の酷い昼下がりに
あなたのために
シャツにアイロンをかける
一万円札の皺を伸ばして
さびれた小奇麗な郵便局へと
絵を受け取りにあてどなくあるく
あなたのために
柔らかいこのひざを折る
わたしはわたしで
ひとりのにんげんでいたいのに
嘶くような
あなたの叫びにまたしても負けて
あなたが描いた私の裸体を
頬を染めつつ
寝室の奥まったところに飾る
あなたは今どこで
すきっ腹を抱えながら
くらい川を眺めているのか
おんな一人で
しゃにむに
生きてきたわたしの在りようは
蟻のようなものと知り
せめてひかる台所に立ち
季節外れの秋刀魚を丁寧に焼く
感謝
おれは自分がときどき意識を失うことをじつはずいぶん前から知っていた
意識だけだ、その間に自分が何をしていたのか、それは後から思い出すことができた
それは決まって自分がひとりでいるときに起こっていた
ふだんとたいして変わらないことをおれはしていた、しかし、
そのときのおれは左利きだった、おれは右利きだ
なぜ、ひとりでいるときにおれは入れ替わるのか
その理由は分かっている、左利きのおれはしゃべれない
入れ替わっている間はけっして電話に出ないのだった
おれが頼んだピザの配達を受け取るときも、無言で
若いバイトにごくろうさまとは声をかけることがない、おれなら愛想よく言う
統合失調症かいわゆる多重人格の軽いものだろうと思っていた
自分が何をしていたかの記憶はある
ジキルでもハイドでもない、おれももうひとりのおれも犯罪は犯さない
食卓の上にスケッチブックが広げられ、おれの似顔絵が描かれていた
思い出せば真夜中におれは左手で自分の似顔絵を書いている
それが一週間続き、おれは決心して医者に行った
もうひとりのおれがおれにメッセージを送っている
医者はおれの話を聞いて3日後に来いと言った、おれは
3日後に同じ医者の診療室に入った、似顔絵は三枚増えた
医者はおごそかに告げた、おれは双子だった、と
あなたのカルテを探しました。あなたはシャム双生児で幼いころに分離手術を受けています
心臓がひとつしかなく、その心臓はふたりぶんの脳に血液をおくるには小さかったのです
どちらを、どちらかだけ、どちらも選べない、親なら当然でしょう、当然です
だが、選べないのが当然だからと言って、半分ずつ選ぶということが許されるだろうか
人間を半分ずつ
あなたのご両親は双子の脳を左と右の半分ずつをひとつにしたのです
おれの脳は右半分を取り去られ、もうひとりのおれの右脳がおれの頭に移植されたのだと言う
そんなことができるんですか? 脳の移植なんて聞いたことがない
幼児の脳はすばらしい可能性を持っています、血管さえ縫合して栄養を与えれば、
たとえ最初は別れていても、あとは勝手に成長できるのです
ばからしいと思ったが、左手が勝手に動いておれの鼻をつまむ
ほら、いるんです、右脳には言語野がないので言葉はしゃべりませんが、
あなたはあなたたちなのです
知は力だった。知ることによって何もかもを変えることができる
プトレマイオスの時代には太陽が地球のまわりを回っていた
いまでは地球が太陽のまわりを回っている
ハローハロー、ぼくを見つけて
鼻が陥没して顔が内側に折れ始め、おれたちは目が合った、左目と右目で見つめあう
半分ずつの唇でおれたちは口づけを交わし、再会を祝す
おれはおれたちだった、ぼくはぼくたちだった、
医者はにこやかだった、低い鼻がよけいに低くなってしまった
いいさ、鼻なんか
頬を伝う涙が温かい、と感じていた
おれたちは涙の温度をふたりぶん、感じていた
父の権威
父の子として生まれて良かったことは無いと思う
日曜日に父はいなかったし
私は父を知る機会に恵まれていなかったから
父の子として生まれたことは
私たちが暴れた時に
たとえば湯船に沈められて、ばたばたとしていた
兄がふてくされていた記憶であって、
私としては、父は鉄のように強かった
でもそれが十数年を経て
父が死んだ時には思い知らされることがある
私は不良のように働いていて
訃報を知るや舌を噛んだ
誰にもこの人の死を悲しむ権利などないのだと
昔から身を粉にしてはたらいた人の死というものが
月曜日のわびしい事務所の一角であって
自死であったとは誰にも告げようのないものだ
世がわしゃんわしゃんと新しきものをつくろうと
ただ一人私の父の死について、
それが立派であったと言える日というのは
永劫に無いものだということを
当時泣いていた私を撫でてあげたいものだという
世にはばかった、くやしさを
この信条だけは、今なお私の宝であって
誰にも汚されぬものである
誰にも、誰かの死を、嘆き悲しむ権利など無いのだと
私は一人で、強く賢くあらねばならぬのだ
私はその家族を見ている
きれいに折りたたまれた生活をそれぞれが晒している
涼やかな風を目元にたくわえ、定めた先に澄んだまなざしを向けている
生あたたかさにはしっかり蓋をして、静かに四隅を整えて桐の引き出しに仕舞い込む
できないことは静かに首を振り、できることを楚々と繰り返し、その時々を静かに噛み締める
遠くの山から湧き出た一本の清水で丹念に水みちをつくり、日ごと適量の汗をかき
ふくよかに笑い、小首を少し傾けて悩み、夢食い虫にならず
体内を巡る数億の血の道を日々めぐらせるための質素な食事を摂り
麓に放牧された幾千の羊を数え眠りにつく
よろこびを一つづつ紙に書き、ひとつひとつの物事を細やかに語り
それぞれに、指の湿度を感じ念じながら種をまく
小葉を揺らす言葉が、高層湿原のように数千の夜を超え確かな現実となる
生まれた現実を皆で祝い、祝福の言葉を押し並べる
その言葉を発し続けることで、言葉はさらに現実を成長させてゆく
小さな現実を皆々が自愛の目で崇め拍手する、それは素直な心を広げることであり、自らの解放である
開放された現実は心を持ち、恩返しにくる
小冊子の中に静かに活字として埋め込まれ、不思議な薬効を発揮し始める
それらの人々は飾ることのない、些細で凡庸な事柄ですらも優しく捉え、美しく議論する
そしてそこから、小さくも形を持つ富が誕生し続けるのである
まとわりつく陰湿な襞を伸ばし、口を尖らせたり、なだめたりしながら動物の家族のように舐めあう
やがて富は彼らを覆うように存在し、あらゆるものを守り始める
天空の怒りや突然の粛清、そういうものですら屈しない富を手に入れる
それは一心不乱に農民が作物を作るときに唱える豊年の祈り歌のようでもある
アラーム
魔法のランプをこすると煙の魔神が出てきて言った
無能は怠惰の言い訳にはならない
ペルシャの絨毯は
空を飛ばなくても高価だ
夏の夜は精液の匂いがする
タバコに火をつける
やめられずにいるが、肺癌になるのはこわいと思った
絨毯の外に火のついたままのタバコを投げ捨てて
おれは高度をさらに上げる 雲を抜けると正面に月があった
満月にはすこし足りなかったことをあとで思い出す
夜の雲を上から見おろす おれはきみをさらいに行くところだ
手紙をくれたはずだ パパに会いたいと書いていただろう?
砂漠の製油所で働くインド人の出稼ぎたちに日本のタバコを一本ずつ配る
インド洋を越えてきみをさらいに行く
おれは隣に寝ていた女をベッドから蹴り落とす
行くところができた、そう言っておれは部屋を出る
きみがくれた手紙はどこかに忘れてきてしまったようだ
手元にはないが、警察に通報はしないで欲しい
近所の幼稚園で運動会をやっていた、おれは
見物する。適当な子どもを見つけておれは一生懸命に応援した
応援しているときみが本当に走っている気がした
おれは一等になったきみをゴールに出迎え、両手で包み込むように抱きかかえる
見知らぬ母親が悲鳴を上げながらおれの腕から子供を奪い返そうとする
おれは母親の頬を平手で叩いた
すぐに男たちの拳がおれを打ちのめす
いつもそうなのだ、おれは煙の魔神のように本当にはこの世に存在しないのだった
会社をクビになるので警察には通報しないで欲しい
おれは土下座したが警官はすぐに到着しておれをパトカーに乗せた
おれを後部座席に押し込み、運転席に座って振り返った警官の顔は煙の魔神だった
努力は無能の言い訳だ
キーを差し込みエンジンをかけ、赤色灯を回す
おれはきみの住んでいるところを知らないので
パトカーがおれをきみのところへ届けてくれる
a party
そして薄く蒼づく空気が街に降りて、夜の濃度を増していく頃、僕らは街を歩いて行った、君の瞳に揺れていた、オレンジの灯
密輸
砂と骨
君と僕
自由について とか ?
始めようか party
フェイク・ファーと鳥の羽毛とバルーン、チープな電飾で部屋を飾りつけよう
地球色の石をてーぶるに置いて
夜 地球が密かに回転を止めることを僕らは知っている
違う ?
僕らの骨 砂
27℃の温い涙ならゴミ箱にぶち込んだよ、
僕の薄い微笑みは炎から出来てんだよ、
誰でも良いと僕の唇が言ったんだ、
君の目玉を舐めてあげる
その涙を飲んであげる
始めようよ? party
君は男のコだけど
マニキュア塗ったげる
ダーク・ブルー、それともカナリア・イエロー?
ひりひりするpartyにしたいね
彼らの自意識をびりびりさせる音楽が欲しいね
犬と猫も呼ぼう、りぼんをつけた虎と熊を部屋に放とう
狼は僕のお気に入りさ
彼の骨の入ったペニスの美しさを君にも見せてあげたいな
ほら、玩具の兵隊は全員配置についた
ピストル型のクラッカーが鳴り響いて
鳥達は笑い
花が踊り
間抜けな女がカシス・ソーダを零すのさ
君の骨の柔らかな緻密さを僕は気に入っているよ
その間抜けな微笑みも。
そして何処か戦場で血が流れ
僕はワインを飲み干す
×××÷
−+−+
愛なんて棄てちまえ、ね ?
君の骨を抱きしめてみたいな
そして夜が更けるころ
ピストルを何丁か用意して
僕らは革命家ごっこを始めるんだ
革命 その世界で最も下劣な欲望の捌け口を
そして
君の骨を砕いて
僕の骨を砕いて
それは白い砂丘に交じり抽象の一握りの砂になるだろう
そしたら その砂丘の上に掘っ立て小屋を建てよう
そこで演奏すんのさ
君はピアノ弾きで
僕はボーカル
そんで
この世で一番悲しくて
この世で一番素敵な
恋の歌を歌うのさ
砂 人骨を砕いた砂の丘 風が滑らかにその白に風紋を描き形を変えていく
そして夜の濃度が一番高まるとき 地球がそっと回転を止めるのを僕らは知っている
君は息を詰めて 息を吐いて 弛緩する
その喉元に僕が突きつけるのがキスかナイフか、
僕は知らない、まだ
魂 魂 繁殖する魂の蔓を切り裂いて切り落として
やっと僕らは人間になるだろう
産まれる前から死んでいたとしても。
だから 今 僕の涙にキスしてくれよ
明日には消えてしまうだろうから
風の音 磁気嵐とオーロラ 君の瞳に揺れていたオレンジの灯
good bye see you good bye しーゆー?
言語のロジックを解体して
君を解体してみたいな
僕とおそろの歌をあげる
そして僕らは朝焼けの陽が空を薔薇色に燃やす中、静まりかえる郊外を抜けて歩いて行った、何処までも歩いて行った
hop-step-junk
昨日Amazonで
「世界part2」を注文した
けれど
新しい世界の
パッケージを開くまで
暫く
僕には
世界が無い
「世界を失った日に」
僕に泳ぎ着く前に
きっと
人生は
終ってしまうから
盛大に
「バサロターン」
空の破れたところから
ふいに
あらわれた蝶
「縫い目」
天才はいらないと
声高に
天才を
呼んでいる
「フラスコ」
白いシャツに夜が映り込む
「他人」
よく冷えた言葉並べました。
「牛乳レター」