伝えたいことを見つける前に
言葉が流れ出てくる
やつらが「病気」と呼ぶ現象だ
心のバルブが壊れているらしい
よく晴れて風が強い日には
油断すると空へ落ちてしまう
そんな錯覚と同じだという
たいていの場合はその後で
あふれ出た無意味な言葉たちを
溜め息まじりに片付けることになる
あまりにも情けないから
何とか意味を見出そうとする
とまらない悪循環というわけだ
この薄い壁の向こうでは
多くの言葉が流通している
たとえば政治や差別や貧困といった
実にくだらないものから
愛や神様や戦争といった
本当にくだらないものまで
でもやつらは言うのだ
それらには価値があると
あるように思えると
では、なぜ「病気」と呼ぶのか
奴らの中では矛盾しないらしい
でも実際はどうなのだろう
意味があると思われた言葉が
実は空っぽなことも珍しくない
それもまた錯覚なのだろうか
もしかしたら言葉自体が
幽霊のようなものなのだろうか
結局はおれもやつらも
何一つ変えることができず
誰一人救えないというのに
今日もまたこんな風にして
世界中の「病気」なやつらの口から
情けなく、だらしなく、果てしなく、
言葉は流れ続けているのだ
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作品 - 20170804_053_9817p
- [佳] 流出 - 无 (2017-08)
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无