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作品 - 20170801_738_9806p

  • [優]  太陽 - maracas  (2017-08)

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太陽

  maracas

太陽の輪郭が今日はやけに際立っている。西の空は地平線の上で待っている。空に浮かぶまるが一つ降下すると他のまるもつられて降下する。太陽光線が植物の葉の中を通過する。紫かつ橙色の空が沈んでいく。時計の針が膨れて誰かの手がそれを潰した。反射的に光球が破裂した。

子どもたちが唱える念仏に合わせて立体的に踊ってしまう観葉植物が街の方で人気らしいが、どこの街で売っているのか誰も教えてくれない。葉っぱの模様を、穴があくまで観察することもできない。

植物の、地中にある茎のことを、地下茎という。大気中の水蒸気量が極度に増大した昨日、植物は地球史上初めて夢を見た。植物に寄生する虫たちも、ほとんど我を忘れていた。光速で移動する概念が地下深くから放射され、不完全な迷路の中で立ち止まっている太陽光と衝突する。

まるい観覧車が四角になっていて、太陽みたいだ。太陽のせいで職を失った若者たちが、食べるものを探して穴から這い出てくる時、子どもたちが唱える念仏に合わせて立体的に踊ってしまう観葉植物が受精する。街から街へと走り抜ける若者たちは、静止画のようだった。西の空が沈まないように監視を続ける人たちは、紫かつ橙色の空を見て、わざとらしく感嘆する。白い三日月が、まるい太陽の三分の一ほどの大きさで空に貼り付いている。日没という現象は、すぐに始まりすぐに終わってしまうということが、この地域でもどの地域でも知られている。

紫かつ橙色の液体というものが存在していたとして、液体がすべて蒸発してしまうのにどれだけの時間を要するか計算せよ、という課題が出された。言葉の定義について調べたり考えたりするよりも、夜明けを待っている方が楽だった。

植物の茎を使って文字を刻んだ粘土板が崩れた。のどが乾いた人たちは太陽に背を向けて歩きだす。結果は原因より容易で、原因は存在より容易であるということが確認された。地球の表面を雑に転がることでしか前に進めない球体があり、その転がり方の雑さに世界中が驚嘆している。球体に非があるのでも、地球の表面に非があるのでもない。問題は相対的だった。

情熱がもてはやされる時代に、子どもたちが唱える念仏に合わせて立体的に踊ってしまう観葉植物は上手く適合した。この地域でもどの地域でも葉っぱという葉っぱが踊っている。子どもたちの舌の細胞の一つ一つが、空気に触れるたび隆起する。概念という概念が、細胞という実体をもって、おぞましいほど生きている。舌は口腔の闇の中に隠されていた。

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