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作品 - 20170708_800_9746p

  • [優]  #06 - 田中恭平  (2017-07)

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#06

  田中恭平


昨晩の大雨が嘘のように、時計の針の残像も消えてしまった、今朝も僕の魂は病み、潜在的犯罪者にされてしまう僕は、僕らは道路の右を歩くのか、左を歩くのか、ふと考えては忘れようとして、する。政治。反対に生活は静か過ぎるもので、今わたくしの耳にはパソコンのファンと、隣のマンションの幼児が笑う声しか聞こえない、耳が四枚あっても是なのだ、白いビニール袋を溜息のようにデスクへ置き、わたくしというこの充つ蒸留水は、けして曇天と喧嘩しようなどとは思わないし、彼ら雲達も考えてはいないだろう。龍神。の、ことを加味しつつ、あらゆる天災はメッセージなのだろうか。ひとはそうあって欲しいのだろうか。龍神。は、遥か高みにおられ、我々人間のことなど眼中にないのか、ふと考えては忘却しようとして、する。ということを先程書いていた。その間蒼い炎は蛇口を捻じ曲げ「アラーは偉大なり」という言葉と共に消えていった。ほのおを誤って書けば、ほのうとなって歩脳と変換され、脳が歩き出す。その1リットルが歩いているのは砂漠なのか、ニューヨークのセントラル・パークなのか知れない。大体、神は概念であると言える立場にわたくしはまだ滴りと怒りの沸騰を挙げられる立場に、いないのだ。ここ郊外は世紀末をひきずっていて墓ばかりある。我々は残されたものでしかない。それだって生活にはなんら支障のないことだった。筈だった。傷つけることも、自分ならば、死ぬことも、他者ならば、嘲ることができる、けったいさを許してほしい。そう書く己は赦せないけれど。昨晩のこと。昨晩のこと。死神が勤労中にも関わらずかまってきた。死神といえど神なので、幻聴と知れようが、四枚の耳で聞いていた。知り得たのは、私は未来より見られるものだということ。必死の抵抗の末、といっても丹田式腹式呼吸だが、職場で発狂せずにやり過ごし、微熱が言葉に変わる幻覚のなか必死振り払って帰ってきた。帰って寝室の床に尻を落とし煙草を喫った。死神。死神は去った。ざあと梅雨の嵐がやってきた。さもあらん死神も入ぬ梅雨の室、にはならなかった。忘れることのできない幻影は夢のなかに雪とし積もる。眠りに眠った。カラン、と茶の氷が落ちる音で目覚めた。キインとしたその氷音──造語、が耳鳴りのように今も残って、落下傘部隊が落ちていく間に、僕はガムを噛んで苛々を殺している。ざっと90グラム噛んで、腹が緩くなっている。緩くなって、緩くなって、どんどん細くなっていく。そのまま消えてしまうんじゃないか、という光りの中に一人居る。透明なこころ、滴して晴れろ。回覧板で今日も喪報が回ってきた。花は喋らないからうつくしい。ただ生きていますとメッセージしている。また花を捧げなければならないのだろう、と考えていたら今まで実際してきたのか疑問に思った。花の真実も知らないで。人間より植物の方が偉いのに。茶色い戦争、とは言い得ているな、とふと考えて忘れようとする。サーカスの道化師の哀しみよりもっと深い生活の哀しみがある。観客さまは皆鰯なのだ。弱いのだ。アメリカが内実アラーの神を畏怖していることは知っているが、等しくそれはYahwehなのだ、と考えた瞬間、何かのボタンが押された気がする。いとも簡単にあっさりと。亀さえ啼く国に生まれ、獰猛であってならない理屈はない、からここまで書いた。僕は詩をやめようと思う。煙草をやめるより難しそうだけれど。嗚呼、でもこんな戯言、あなたの眼球に映って良かった。

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