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作品 - 20170703_567_9729p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


季節は夏を王冠にして

  鞠ちゃん

銀ヤンマの複眼

虫眼鏡

太陽を透かし見るビー玉


金木犀の匂う街を

あたらしい恋に付け睫毛してゆく女の

銀ラメのスカートが風に膨らむ


虫眼鏡を手に持って

まだ生ぬるい10月の海辺に腹ばいになれば

砕けた珊瑚に残るのは

太陽が差し込むなか、海草が揺れていた海の記憶

角が丸くなった琥珀色のガラスは

鍵っ子が暑い夏に部屋で一人飲んだ

コカ・コーラの瓶


乾いたドラムが小刻みに午後6時を揺さぶり

ぽつぽつとあかりが灯りはじめたマリーナ沿いの

木目がペパーミントグリーンで塗られた丸テーブルの並ぶ

季節はずれの海の家に僅かに停められた

喧嘩して黙り込む恋人たちの車から流れる


瞳のシャッターを切る

それはどこまでも世界最高最速のカメラだ


取り留めの無い暗い冬に

分厚いコンクリート壁の内側で鉄のパイプ椅子に座っている人

遠くでは真っ白な雪の粒が思い思いの幾何文で

つつましく降っている

触れると束の間

指先で震えて

融けて消えた


記憶のなかの埃を吸った重いカーテンの垂れる山の廃校

古びたピアノの心臓に手を当てる

彼女は泣いているけれど

その、調律が外れて

メロディを乗せればとんちんかんな

こもった音に愛は満ちる


夏草枯れて

冬を迎えても

わたしは夏の気が遠くなるようなあの暑い日に

野遊びする子供の草笛になれたのだから

あなたがわたしを忘れようとも

わたしの夏は永遠だ

文学極道

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