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作品 - 20170605_720_9664p

  • [優]  会議室 - 蹴鞠 路次男  (2017-06)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


会議室

  蹴鞠 路次男

ホワイトボードの上に
たくさんのタスクが書いてあって
それは黒い字の中にときどき赤い字が混じっていて
あれって血かな? と
隣の遠藤さんに訊きたいけど
会議室は静かで
ひとこと発すれば千語を要求されるくらい
会議室は静かだったので
私は黙って血を見ていた

カラフルな丸いマグネットが
ホワイトボードの隅にきれいに並べてあって
ひとつだけマグネットが剥き出しのがあったから
あれが孤独ってやつかな? と
隣の遠藤さんに訊きたいけど
会議室は静かで
君はどう思う? なんて水を向けられたら
きっと酸欠で倒れてしまうから
私は黙って孤独を見ていた

マーカーのインクが薄くなったので
主任さんはついに黒を諦めて
全部を赤で書き始めた
これって出血大サービスだね、って
隣の遠藤さんに言いたかったけど
会議室は静かで
シュルキュルとマーカーが出血する音だけが響いて
貧血で目の前が暗くなってきたので
私は一生懸命ホワイトボードの
ホワイトなところだけを見つめていた

ホワイトボードは文字でいっぱいになり
もう書くスペースが無くなったので
主任さんはイレーザーで左半分を消してしまった
ホワイトが復活した部分に
爽やかな風が通り抜けた
「リセット」
遠藤さんがつぶやいたので 私は
うん、とうなづいて
剥き出しのマグネットを見つめた

文学極道

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