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作品 - 20170523_260_9635p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


マジック・バス

  

人の歴史が終わったと噂される午後
1台のバスが牧草地を縫う道を走る
車内にはたっぷりと湯が満たされて
ぼくたちは長い旅の疲れを癒やす

おや、前方の薬湯に入っているのは
中学の時に同級生だったN美じゃないか
なぜか彼女だけは当時のままで
その白い肌にぼくの感情は乱された

番台のおばさんに教えられて
邪なぼくの視線に気付いたN美は
未成熟な裸身を隠そうともせずに
勢いよく湯船から立ちあがった
その両腕には着剣したAK-74
慣れた様子で銃口をぼくに向ける
彼女の背後には屈強な男たち
やはり全裸のままで武装している

男たちを従えてぼくに迫るN美
ぼくも仕方なくFA-MAS G1を構えると
N美の可愛い乳房の間に狙いをつけた
その時、いきなりバスが急停車して
ぼくたちはみんな湯の中に放り込まれた
窓の外を見ると無数の象たちが
バスの前方を右から左へ横断している
ぼくは思わず象の数を数えはじめた
最後の1頭が通過し終えた時
その数は実に999頭に達していた
そしてバスの左手前方にそびえ立つ
先のとがった塔の最上階の部分にも
もう1頭の象がいて地上を睥睨している

「そういえば今日は1年で一番昼が短い日ね」
いつの間にかぼくの横に立っていたN美が
さっきまでとは打って変わった笑顔で言う
気が付けば湯船には色鮮やかな柚子が浮かび
リウマチや神経痛などに悩む老人たちが
あらたにバスへ乗り込んできて湯に入る
ぼくとN美も再び熱い湯に肩までつかり
あの頃のことを懐かしく語り合うのだった

文学極道

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