ガラスの壁に、手を触れて、彼は見る、音もなく、蠢く、群集を。一人一人に、足音はつかない、そうして、忙しなく、いつまでも、蠢いている。真昼の、静かな都会、鳥が、空を、飛んでいる、ような気がする。駅のホームに、彼は立つ。ドアが開く、彼は入る。乗客の、誰もが、目を閉じて、蝶のいる、虫籠を、抱き抱えている。彼は、そうして、音もなく、茫洋と、微睡んでいる。真昼の、静かな都会を、音のしない電車が、駆けている。
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作品 - 20170518_994_9623p
- [佳] 虫籠 - おでん (2017-05)
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