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作品 - 20170506_525_9596p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


GWの午後に。

  鞠ちゃん

笹の葉がささめいている
シャリシャリと耳を洗う
洗いなさい、洗いなさい記憶を
そうたおやかに告げる若竹よ
風にもんどりうつおまえはしなり
いつかの若い女よ
根無し草に必要なのはガッツだ
欲を燃やせよ
笑顔の仮面が転がるよ
砂利石に紛れて砂利石の
みすぼらしい慟哭がよじれ
焦燥がおまえを焼き
餓えて走るのら公に白襟はナイフの光だ
滝の逆流する闇に血はぬるり漂い
毒のくすぶる緑のなかに立った戦士よ
戦場は家ではなかったか
敵は父であった
透けるモノトーンの城は形骸が木霊し
女中は愚鈍に聡明に無口ではなかったか
焼け野原に雨が降って
丘の上には時計の止まった家がある
駆け上がる風が待ちかねていた今をオルゴールする
時の無い家よ
耳を切った男の絶唱を悼んで恋人よ
あなたの無念と砕けた夢は
みなぎる光の中で
夏のソーダ水だ
生きることは恋に似ている
そんな風に独りごちてグラスにキスして
あなたの片耳を庭に埋めた
愛という名前のかわいいお墓よ
丘の上の胸襟のカーテンが
風に舞い上がって
ああ青い物影が見える
ここは囁く亡霊たちが漂い
モノトーンと色彩のはざまに回転木馬がまわる
それもいいだろう
ここはひたひたとひたひたと
いつかのさよならが木霊する丘なのだ

文学極道

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