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作品 - 20170504_446_9589p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


水蛭をとる人

  玄こう



/カイ(χ)の化石の目蓋はいつまでも閉じたままだった /天と地を展(の)ばしながら /点と点とを手足で繋げ/ゆっくりとした手つきで/杖を回し/腕を動かし/時々手足が止まった

湖のなかにいる蛭(ヒル)を飼いつづけている老人だった,散切り髪の仙人のようなふうで,痩せこけ浅黒い顔で,熱心に湖の底を見つめていた

>いったいなにをなさっているのですか?
通りがかった彼(*)は訊ねた

>“自分の目や,耳や腕,その肉とするために蛭をとっているのだよ”
老人はささやくようにそう応えた

老人も,彼も,そんな一言では,なにも思い及ばぬことであったから,以降二人はなにも応えようがなかった



>///養殖のための水槽が近くにないニョーニョーコマーシャル/コップの水を移しかえては相づち打つコマンドの顔/あのぅ、あんのぅ/ケイケン()ちの()ちの/砂漠がさ迷う/詩が死に/死が詩に/詩の欲する先を/若くして聞きかじる
>‖わたしがグラスの角を‖棒で‖叩いて/叩いて‖をつなぎ止め/文字る/もじり/張りつき/引っ掻き、滲ませ、、,、、_叩いて_叩いて/棒の柄で‖叩いて‖叩いて‖ハッケョイおこったおこった‖おのこがおこった/‖グラスの縁からゴロゴロころげた‖‖


老人はじっと目をつむり口をふさぎ,老人の肉となるたくさんの蛭たちを杖に張り付かせながら,湖をかき回していた

しかし誰も,みなその水蛭を目にした者はいなかった,老人がその杖を持ち上げたところなど誰も見た者などいなかった

彼はその場を立ち去り,その老人のことについてばかりを考えていた,そしてこの老人が持っている(χ)の無数の水蛭,どんなものだろうか?,とただ思い浮かべるだけ思い浮かべながら,ただそれだけを文字にした,ただそれだけを詩にした,生涯彼はただそれだけを文にしてそうして書きつけていった



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(本作の註)
ワーズワス『決意と独立‐水蛭を取る人』へのオマージュ作。彼(*)とはその詩の主人公である私、あるいはワーズワス自身を含む
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文学極道

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