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作品 - 20170501_382_9581p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


蒼ざめし

  

我が頭骸骨をさわりたい
目玉がはまっていたところから
外を覗き込んでみたい
穏やかに昇天している無量の言魂がみえるだろう

我が墓石を前に、
我が頭蓋骨を両腕に鎮めている
あちらの人間も、こちらを見ている
あちらとこちらの境界で、互いに気不味いではないか
胡座の裡にどっしりと座り、

人目を気にせず

ああ、我が頭蓋骨を抱きしめていたい

出かけるのは深夜、我が頭蓋骨のとなりに腰かける
星林は夜景に埋もれ、街明りは絶景を見下ろしている
もう、帰るところがないのである
宙も大地もないのである
雨風を凌ぐ、
家に設計図はいらないのである
あちらもこちらも、
同じ社会構造になってしまう

ひとり静かに死んでいたいのである

我が頭蓋骨を抱きしめ、
ほんとうに最後までよくがんばった
心臓も労ってやりたい (火葬してしまった
せめて墓を建ててやりたい (心臓に名前がなかった
今さら申し訳ないと思う
四十九日、心臓を靖子と名づけ呼ぶことにした

*

靖子、我が片恋の女
あちらでは、
一言の会話さえ、交わしたことがなかった
しかし、今なら告白できる気がする

暦の境界に靴を脱ぎ
ここから飛び降り貴女の跡を追うのだ

靖子、靖子さん

この勇気はいったいどこから湧いてくるのか
こちらで貴女へ伝えられなかった恋情を、
あちらで貴女に伝えること叶うであろうか・・

そう思うと、


靖子がどきどきする

文学極道

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