モザイクの一室へと屈葬された
催奇的な昏眠に身を投げるあわい獣たち
彼らは朝に赤い棘を飲んでねむり
昼にやわらかく硬直する
夜には完全するいびつな死骸から
塩の樹がいくつもたちあがっては林立し
ひろがりの森閑のさなかを因子の勾配がすり抜けていく
ひとときだけながく凍った冬に、
あざやかに濁る腐肉の空洞から
極彩色の翅をひらく白い蛆たちが
雲翳を埋め尽くすほどに舞いあがる
たかく、自重がかるさを増すほどに
負わされるままの寓意は分割をくりかえし
逆行/逆光の摩滅に耐えかねて
しだいに醜く焼け焦げていく翅
(は、とてもきれいでした)
翅のない奇形の蛆はどこまでも白く
やがて回転しながらゆっくりと落下する、
いくつもの手が川の水面を掻き乱すたびに
溢れる相貌がそこらじゅうに散らばって
異形を次々と提示しながら
蠕いては折りかさなる、
モザイクの一室へと屈葬された
催奇的な昏眠に身を投げるあわい獣たち
おだやかに腐敗する死骸のうえで
塩で作られたたくさんの腕が垂直に聳え
傾きはじめた夜を支えている、
いつまでも脆くありつづけるための
獣たちの瞳の赤い化石を
刳り抜いては食べてしまう人影が
けっして途絶えることのない列を作りながら
ふかく翳った塩の森を通り過ぎていく
彼らが歩き
偶発的な白を踏みにじる音だけが
ふぞろいに凍てついた冬の
ひとときだけながい静謐を滾々と満たしていた、
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選出作品
作品 - 20170429_356_9579p
- [優] design - 紅月 (2017-04)
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紅月