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作品 - 20170419_119_9558p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


公園「トランプ少年と量子論的な現実」

  アラメルモ


やがて波が砂を浚う
鬱蒼と草が生い茂る辺り
廃材を蹴散らせば土砂が降り積もるだろう
唾を吐いては石ころを投げてみた
願いもしないのに
そうして街は雲に包まれる
ベンチに腰をかけ久しぶりに外で煙草を吸ってみる
僕らはただ風景の小さな泡に溶け込んでいたのか
少年は泥の穴を少し掘り続けては場所を変えていた
一体何を探しているのか、誰も少年を知らない
煌びやかな金髪で、少年は髪を染めていた
街のあちらこちらに凹みの跡が残りともに移動する
怒った住民のひとりが少年を問い詰めた
「空き地に記憶を埋めたよ、ここの何処かに、」
アイス一ケ分/真面目な話しだよ
蠢く細胞は崩れる巨大な壁を築いてはまた食い潰し
石像を這う蟻が
瞼を閉じると大きな黒にみえた。

追い出してしまえ
いや、気がふれたのだろう
誰も本気で少年を止めさせようとはしなかった
掘っては住民の誰かが埋め戻し
少し掘っては粘土で固める守人たち
少年は頂きに黄金の杭を打つ、その繰り返しがずっと続けられ
海沿いの街には活気が戻っていった/至って簡単に思えた
夕焼けに沈む薔薇色の壁を
裏側で気づかなければ北極星も位置を変えて見えてはこない
いつか年老いた少年は泡の正体を知らずに死んだ
垂直に輝く廃材を泥の中に埋めた
やがて地下と天上はつながれ
波に飲み込まれた砂場
見下ろせば街は人々の記憶からも消えた軌跡
きみが腰をかけた、もう半世紀も前のことだった
いまでは海の底に眠る断層のプラント
いい加減な話しだけど「眼を閉じてごらん、いつでも甦るんだ」
0と1のGap=奇数の雨
空き地を減らせば記憶も増え
穴からわき起こる音だけが静かに響いていた。

文学極道

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