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作品 - 20170412_030_9548p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


母の腕(かいな) & オルゴールの音(ね)

  玄こう

ポンポぽんぽおなかの子ども蒲公英叩いて這いつくばるいつしか風になる
ジュウタンの原っぱが一面に広がる蛸足配線の中をかき分けて世界を跨ぐ
ガラガラと回るオルゴールが木目模様の天井から音を鳴らして降りてくる
トースタの灼熱のように燃える体温が額に音がチクチクする息切れのさ中
がらがら鳴る天井のオルゴールが目に見えぬがチラチラとさする耳の囀り
キーンキーン トーンコ コトン ↓ キーンと スットントンと坊やは聞く
ポンポぽんぽと生れた腹の太古から蒲公英の花弁の茎を手に握り叩きつも
蒲団のなかの真綿のすきま風が音にまたぎおまえは盲の野原を駆けめぐる
大地を這い抜けていけるだろう さぁ ひとえにかたえにゴクッと口の中で
飲み込む苦い唾やらぬめる痰にも慣れ咳込み咽び泣き喘ぎ涎も垂れている
風の混じる小枝を揺さぶる雨と地つづきに坊やの顔から吹き出る汗も滴る
額の熱を冷やしながら毛布にくるませ温める母など未だ見なかった人間の
顔という顔を未だ目にしなかったときのオルゴールの音を天井から聞いた
鮮烈な盲の時に産まれ始めた我が身の重たさを母の腕の中で揺さぶられた

文学極道

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