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作品 - 20170403_843_9533p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


鳥と死と社と列車と信仰

  たなべ


1

腐葉土に埋もれる、錆びた電池
形骸にはみんな興味ある?
嬲り殺しにしたんだ
よってたかって言葉と石を浴びせ
その墓場には時が積もって
ひとりひとりお別れの用意をいい始める
もう植生が変わるから
わたしはわたしを灌養した
男の喉仏を捉えて
締め上げる太い縄の
一端にはもうだれもいない
なんでみんな泣く場所を決められたように泣くのか
納得なんてなんにでもつけられるさ
手のひらの体温が伝わってほしくない
まるで風であるかのように
ふわり去っていきたい
永遠、永遠
発明家もしくは馬鹿が生み出した概念なのだ
それにぼくたちは手をつけることができずに
悲しんでもらうふりをしてくたばる
午後のひかりが傾いていくのが
いつもと違うも違わないもくそもなかった
息遣い
喉が絞まるような声は
泣いているんだ
鳥は縮尺を間違えずに飛んでいくぜ
ぼくたちにできないわけがあるだろうか?
この世から看板の総てを取り除こう
真面目な顔がやめられない
真面目な、いや
その顔をやめるんだ
雲を観測することしか許されない国へ
縁側から日没までに飛びのがれた

2

夏とはぼくにとってこれまでなんだったのだろうか
いつも目指していた時空(長い休みと付随するうれしいあれこれ)
なにを思ってもよかった
きみを好きだといっても
この詩は終わる気がしないぞ
ぼくに余白を残すことを許してくれないのはいったいなに
全部、全部つまびらかにしてしまおうねって誰かが
誰かの蒙昧に腹を立てていった言葉を
復唱してきただけではないのか
そこに優しさをみいだすことも困難
おまえらあわれむのが好きだよなあ
特にじぶんのことをよお
おまえらみないふりがうまいよなあ!
じぶんのこととか特によお
誰がたえうるわけでもなかったんだ、もともと
尊敬する、といってその中身は軽蔑していることはないか?せいぜい尊敬すべきと自分に言い聞かせるのが関の山、その中身は。
なんて疲れるんだ、人生!
考える(られる)ことが多すぎる!
結局はみんな脳みそでつくりだした檻に閉塞されているだけで
そこから飛びたっちまえばいいってだけの話なんだもの
ぼくは誰よりもすぐれた人になりたかった
ぼくは思い通りにこの世を動かしたかった
ぼくは解釈を覚えてずれを埋めてきた
なんとさみしい
ああなんとさみしいのだろうか
おとうさんおかあさん
ぼくを産むまえにどうして死んでくれなかったのですか
こんなことを言ってごめんなさい
改札機の不透明性にすら腹が立つぜ
死にたくて仕方がない
違うな
消えたくて仕方がない

俺の生き方はマラソン大会で路上に出るまでに全力を使い果たしちまうやつみたいだったよ

3

智恵が身につかなかったらよかったと
ずっとまえから思っていて
波が寄せて返すところの家々は
まじないを帯びた巨躯のいきものみたい
というのは
幼児が大人を正当に叱ったとき
それは神さまの審判にも近づくからです
潮風に社の梢がざわめくのでも
きっと人はあるべきかたちを肉付けて観る
無知という状態が羨ましい

4

喜ばしいなら喜ばしいといえばよかった
しかし口をつぐんで大事にする必要があったのだ
言葉はいつもうわすべるが、そうでなかったら、それはそれでかなしいとおもう
秘密をのせて幾つもの駅をぬかして
あかるくしかくい列車ははしる
弱った奴のまけなんだ
かちまけだとしたらだけど
そしてそれは悲しいことでもなんでもない
午前中の太陽を合言葉にして別れようでは、ないか。

5

だれが神を信じたってわたしが信じなければわたしは救われないのだ。のか?
見えざる手の、手垢がいまだつかない陸地の端し、
寄せて返す波にあわせて働き、食べ、眠るところ。
だれだって祈るよな?
唾をはき、砂を蹴るよな?
それが信じられないやつには意地のわるい態度で仲間はずれにしてやりたい。
体重をかけられ続け、偏平になった信仰をほんとうと言うのかい?
大きい声など出ないのはそれでいいんだよな?
大きい声を出してもそれはそれでいいんだよな?
いちいち咎めることはしないでくれよ
おまえが神さまじゃないのだったら。

文学極道

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