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作品 - 20170316_398_9495p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


斑入り模様

  宮永



日射しの翳った庭
斑入り模様のアオキの葉っぱに
湿った土の団子をのせて
松葉を一組そえたなら
思い出して赤い実二つ
さあ、召し上がれ
とつぶやく前に
お昼だよと呼ぶ母の声
皿も団子もそのままに
台所へかけこむと
おむすびにしようと思ったけれど
ごめんね、ガス釜の調子悪くてね
ご飯うまく炊けないの
診てもらおうと思うけど
ふふ、いい加減、電気炊飯器に変えようか





一人炊き用に買った炊飯器は
講義に遅刻しそうな朝
コードに足、ひっかけて
棚の上からゴトンと落ちた
それっきり閉まらなくなった
蓋、グッと押さえてもパカン
重たいカバンのせてもパカン
まだ一年も使ってないと
すんなり往生できない私に
買ったほうが早いし安いと
冷やしサラダ中華が女子に人気の学食で
友人たちが口を揃えるから
わかったよ、で、何ゴミ?
燃えないゴミの日いつ?
電気屋さん引き取ってくれる?





お盆前、渋滞気味の高速道路をようやく降りて
人家もまばらな道を実家へと車を走らせる
後部座席では子供たちが眠っている

道路の脇には廃棄物の処理工場
金属類が集められて潰されて
それぞれのモノをとどめたままに
錆びている
ゆるく圧縮されたこの四角い集合体は
いつ、再生されるのだろう
雨ざらしの処理工場にはいつもヒトケがない

降りだした雨はフロントガラスににじみ
支流から本流へ流れ込んだり溢れたり
どこか知らないどこかを指して
ぶんめいは進歩をとげて発展し
近県の福島やチェルノブイリまでさ迷って
家に着く頃には
すっかり本降りになっていた
雨音に
耳をすませて

駐車する車の音に呼ばれた母が
傘をさして迎え出た、庭先の
アオキの葉はつやつやと濡れて
根元では小さな泥のお団子が
もうとっくにほどけて
かえっている

文学極道

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