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作品 - 20170311_243_9488p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


Dicotyledon

  アルフ・O


醒めた顔を隠す、でも抽出する花。
(肩をそっと掴まれ
 見えない弦が鳴る、)
 不協和音)
甘えてなどいない、よ、と
助手席に爪を立て(割れる(人じゃない、音
(聴こえる?
 今流れてる作りかけのこの曲も、いずれ袋小路だってさ。
 知らないけど。気休めの契約だし、
絶対なんて求めてない。求められない、って、
(みたいな、
 、みえない、箒星)
(血の透ける腕を、
 摘まれる)擦れる。(消される、
(切る、
 (切る、
  (切る、
無数の五線譜。
突き当たりで駐まる。
(アイビー、アイビー、
このまま、何処へでも手を引かれ続けても。
いずれ羽根が生えてくるまで
たがいにしばりつづけること、全部知ってる。
(いつかのゴミ置場のマネキンみたいね。
 体温あるけど。
 せめて、唾を吐く、抵抗、
 指を強く咬む、かむ(プラネタリウム、
(アンプリファー、花粉を震わせる、4時、
(裁きの如く物語の侵食を告げる警報を
 掻き消すように喋りつづける、
「汚されたい。
「汚されたいよ、ねぇ、
「半分の月が翳る、
「LEDが交錯して、
「バンビが空を駆ける。
「壁の星を剥がしながら。
「テンションコードなんて思い出せない、
「タトゥーシール失敗しちゃった。
「うまく溶かしてよね、この腕を、さ、
「持て余した鉄パイプが目印になるよ。
「黒いパーカーも、
「ビスクドールみたい、その仕草。
「破かれた絵本、鉄格子の中の。
「あふれる、あふれる、
「あたしたちいつまでニセモノなんだろう、
「少し大きなデタラメを言った罰。
「あと10秒あれば。
「期待させちゃったかしら。
「ねがいごとに嘘はない?
「雨も風も雷も去ってしまった、
「こんなに傷む術を持ってるのにね。
「血管が渇いていくの、
「天網恢々疎にして漏らさず、って。
「報いかしら。
「破るためだけに交わす約束、なのに、
「まるでサクリファイス。
「あるいは針をなくしたレコード、
「花火が上がる。
「穴だらけの夜ね。
「これ以上曖昧な関係でいられないの、
「その胸騒ぎが、本当になれば良い。
「そしたら蛍を放そうよ。
「閉じ込めてるありったけをさ。
「弾は二発、
「信号が点滅に変わる、
「口を噤むナトリウム灯。
「あなたは怖くないの、
「キスさせて、
「なら、顔を隠して。
「みなそこ、
「せめて笑って、よ、
「一緒に、死ぬんじゃなかったの、
「こんなので繋がりたくない。
「そう、
「それじゃ、お先に。
「うん、またあとで、ね、
「燃えるよ、サイレンの中、
 エンジンもシートもクラクションも、何もかも。
「その頬を撫ぜる掌、は、
「もう二度と開こうとしないの、
「ブラックサンダー買ってきて。
「痩せたいから。
「どうせ胸の鍵は開かないままだから、
乱暴に閉じられたドア。
1ミリの真空。
グライドする視界。
知覚する、
傷口に張り付いていた
棘の群れが
幾つも重なり
中に押し入ってくるのを。
とうに錆びきった
柔い壁はたやすく溶かされ。
これ以上身体が千切れないように
長く息を吐く。
黒い。
黒い。
黒い。
黒い。
黒い、
肺の中。
グライドする視界。
(アイビー、アイビー、離れないで、
意識はピン留めされたまま、
土に還ることもなく
羊水に踏み潰された蝙蝠が溶けてく、

文学極道

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