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作品 - 20170306_011_9478p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


kissはチョコの味

  祝儀敷


模型のようなチョコレート工場が頭の上に浮いている
私の身体は検体の如く堅いベッドに固定されている
七色の熱電球が工場を派手にデコレーションして
轟々鳴る機械音は蛮人の儀式みたいに響き渡っている


外を通過するトラックのライトは部屋の壁を刺して去る


おもちゃサイズのチョコレート工場はまるで
亡霊
工場に眼球などあるはずもないのに
私が微細な動きさえもしないよう
無機質のそれは冷徹に見張ってくる
チョコレート工場だというのに陽気さはひとかけらもない
壁面の鉄板には呪詛が刻まれているかのように錯覚してくる
血液が消えていく 身体は動かない
かわいらしい大きさとは裏腹の暴力的な機械音は
生物を命あるまま砕いているかのようで
変わらず鮮やかに光っている電球は
工場から漏れ出た屍の怨念ではないだろうか
首を回して目を逸らすこともできない
私は生きていないかのよう
暗闇に薄く見える自室のカーテンや天井たちは
昼間と全く変わらない様相で静かに眠っているが
対して機械音は容赦なく増していくばかりだ
存在感は異空の穴のよう重く
その一点だけが歪んで見える
血のようなチョコの臭いはいたずらに鼻腔を刺激し
体躯を真っ直ぐに伸ばしている私は蝕まれるよう犯される心地だ
筋肉が収縮する 心臓だけが興奮している こわい
浮遊している工場は
化物のような金属音を急停止させたかと思うと
鉄門を開放し中から尾を引いて
白肌の魔女が出てきた
発光するブロンド髪と青い瞳が
動けない私の顔を捕食するように撫でる
魔女の口にはできたての小さなチョコがくわえられていて
そのまま私の上に飛び乗り 甘いキスをした


視界さえも消えた

文学極道

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