コリリ コリリ
ねじを巻き ひらく蓋
キチチ 押さえが上がり
白鳥の湖 流れ出す
ビロードの小部屋
眠っていた バレリーナ
くる、くるり、くる
鏡張りのステージで
ぎこちなく 踊りだす夕べ
待っている 一度しまった 携帯電話
胸ポケットから 再び出して
ようやく わたしに繋ぐ あなたの声を
薄暗い部屋 うつろに 眼を開いたまま
扉を開ければテレビの音量を下げて立ち上がるわたしを、あなたは目にする。
リビングのオレンジ色のあかりの下で、わたしの時間にあなたの時間が流れ込み、ともに拍をうち始める。
キシリ、缶ビールのふたを開け、途切れ途切れに言葉を交わす。
バラエティー番組のどこか薄い笑い声を聞きながら、いつもの夜が回りだす。
朝起きると あなたは いない
あなたが わたしを 起こさないのは
オルゴールが 再び 鳴り出さぬよう
カチリと 扉を 閉めるため
あなたの バレリーナは 眠る
美しいまま
カーテン越しの 淡い光は
全てを 色褪せたように 見せ
わたしは 眼を開けたまま
こぼれてゆく微かな音を
聴いている
.
最新情報
選出作品
作品 - 20161222_582_9359p
- [佳] オルゴール - 鮎 (2016-12)
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オルゴール
鮎