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作品 - 20161215_403_9349p

  • [佳]  影役 - おでん  (2016-12)

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影役

  おでん


水でできたドアに白い花を挿し入れると
丘の上でまぬけな老人が死んでいた
汚れた街路樹の囁きに耳をすましては
タイヤの跡を舐めるように這いずり回り
1+1=5だと思い込みつづけ
間違えている自分にいっさい気づかずに
青空のまんなかで雲にぶつかって死んだのである

しかし彼はそれでよかったのだし
そうしなければならなかった
このまぬけな老人は常に酔い続け
影役に回り
いつまでたっても空を飛ぶ鳥のまねをして
だれもいない海に全力で向かう
そうやってなんもない自分の心を
まるで呪うように這いずり回り
空を飛ぶ鳥の踝を掴むのだ
だが顔面に白い糞をかけられ
ついには街路樹の囁きに踏み潰され
死んでしまった
死んでしまったのである

彼の身体は冬の寒さに張り裂けて
枯葉と水滴と変化して
光のある埃を纏いながら
アスファルトの真下に流れていった
だがアスファルトがそれを嫌がり
真横へ回避してしまった

彼は最後まで気づかないのだろう
そうして彼は最後にこう思いながら
無に還る
“1+1=68だ”
しかし本当は、本当の答えは2でもなくて
彼自身そのものだったのだ

文学極道

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