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作品 - 20161213_340_9343p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


セカンドポジション(既視感に箍められ)

  アラメルモ


美しい駅を探していた
それは木造の西洋風建築ではなく誰もいない改札口
錆びた線路の両端
何処を見渡しても空いっぱいに野原が広がる
足音だけを残した無人駅
いま僕は狭い待合所の片隅に腰を据える
頑丈な木材造りの腰掛け
窓際の薄汚れた白壁には秋祭りのポスターがちぎれ
神輿を担ぐ人々の姿は宙を舞う
 「メモリーズ」
ありあまる空は透きとおり
電線にぶら下がった蜘蛛の糸
人々からけものたちが消える黄昏

いまでは人々も携帯を持ちながら旅をする
待合室には時刻表の貼り紙もあった
列車は必ずやって来るだろう
構内を出て駅前の広場を眺めてみた
直線に向き合う商店街のシャッターは閉ざされたまま
街をうろつく人もいない
冷たい日差しに呼び戻され
気になって横に置かれた看板を見やれば
古い指名手配者の顔が貼り紙にくっついていた
通りを見直せば建物の陰から人の気配がして
不精な風の音がひそひそ話しに聞こえてくる
ひとりあたまの中で時間だけが過ぎてゆく
(もうひとつ手前で降りればよかったのに
 一歩だけ引いて、群れながら、 遊ぶ )
振り返っても列車は来なかった

わらべ箱は轢かれぬままからが砕け散る
気がつけば山の頂きが蒼く霞み
薄赤い灰色の雲におちてゆく
けものたちは冬の朝陽を浴びてねむり
誰かが水やりをする路辺のすみれ
夕立ちのあと野原に霧が佇む
踏みつぶしたシロツメグサが轍を
              辿り着く場所は幼い頃の面影
いつまでもこうして居たかった
「ゾウがいた夏の日」に
罪は小さな傷口から広がる
ふたつめの席がすれ違う回送の先
駅は線路を背負い待っている
あの日僕は予想ばかりして逃げていた
(何処へ向かうの)
それは遠近を逆に狭め続けては
宛てもないひとりの旅が終わり
やがて美しい鳥の鳴き声が聞こえる。

文学極道

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