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作品 - 20161203_115_9321p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


無限の美術

  黒髪

澄んだ空気を吸い頭の中の旋律は新しい。
胸を叩き心をよく整える。
過去をだれたまま放る、筋肉の力でねじの緩んだ頭を刷新する。
人が望むものでは恋、ポエジー、平静が、現状では素敵だが、
望むものは争いの元だと子供のころに分かった。
傷ついて心を隠すほどの過度の内気さ。
生まれたときに泣くことを知り、時がたち泣かされてはならないと覚え。
未来に行くにつれ可能性が少なくなっていく。
宇宙の可能態も、心も。
いや、心は、どんどん複雑になっていくのに、なぜ可能性が狭まるというのか。
時間と空間のせめぎ合った状態を「表現空間の有限性」として考えてみても詮がない。
何時もの通り、大事なものがはっきりとわかるときもう手遅れで、
醜態で赤恥の上塗りをするばかりだ。
だが、一度ならず苦渋を味わったあとでは、唯一者となれると確信している。
心が再び甦るよう誰の手助けも拒否して立つ、
無限という普遍性に満ちた概念が、正しくみなされ、居場所が生まれる。
喜びの渦と枯れ枝の落ちることも表裏一体となっていることが、意外で困惑する。
はっきりとしゃべればときには純粋になり、純粋になればうれしいのだが、
はっきりとしゃべるときの全ての場合にうれしいとは限らないのは神の意地悪だ。
自主性と他者性を、隔たった二者の代表例として、モデル化出来る。
小言や不機嫌をやりとりしたりしてきた夫婦が生きていくうち、
純粋は空の傷の裏側にいくつもしまわれ、
そしてそれは忘れ去られていき──
現代美術は反復としてしか見出されないのだと思うと、
時代が進化していく様子をイメージできる。
テレビの砂嵐はいよいよ激しさを増す。
打って蹴って。
緩慢な生にはもう飽きた。
優しい心と剛毅な心持ち、自らの罪を滅ぼすのだ。
論理のごとき美の上に。

文学極道

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