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作品 - 20161116_249_9269p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


子山羊

  黒髪

子山羊さん
山羊さん
白くて素直だ
礼を言う
あなたに
風土がどうとか言いたくなるけど
ここは一番だ
一緒にいられるのが
吹かれ揺れる草の向こうの
彼方のおぼろな光
現在の心の色は白
そして黒の輪郭
あ、そう蝙蝠の
飛ぶのに似て
私の心も夜を迎える
これから目を閉じ
心隠し

洗面台にたまった水に映る月を散らす
きっとどこかへ向かっている
戻らない時が増えていくほど厚い祝福を求めるものだ
覚えたものが有効になるには
時が揺れ、空が鳴ることが必要だ
一人ずつ生きている人間は
もう一人を自分と同じだと数えたときに一人でなくなる
怒る時また一人になる
共に怒る時には何人になるのか
それは怪しい遊戯のように複雑なかかわりなんだ
暗闇を怒るのは得策でない
怒りによらない鼓動の感覚を満たしてくれた人よ
心のメモリは再び満ちて
怒りが崩した遺物を拾い上げ
この二三歩を寄って花は香る
涙が乾くのを待とう

鳳仙花の夜
おお噎ぶのは
生者の声と死者の声
話したのは
生への意志と夢を語り継ぐことだった
怖くもない
暗くても命の色は
消えても残る自画像の形
消えない軌道
あまりにも無駄な生を生きて来た、というのも
暗闇の迷路の中に閉じ込められていた
壊れた未来があまりにも苦しい
光が閉ざされた頭の中には
甘えるなというハードルがいくつも置かれていて
転んでしまう
一生懸命生きた
楽しんで生きた
暗くなると
侮辱も不機嫌ももう見えない
何もできないこと
何もなくなることは
個人的な消耗だ
それを感じているのだから
生の力を求めよう

白さには汚れた心が映る
多くの光を目に入れた
醜いと思うのは自分の心の反映だったのだ
責任を人に負わせるほどの理路を持っていないから
私はぐずぐずと生きるような日本人だ
要素に解体してみてもいいけれど
新しいものを作り出すときは
現実に学んでから頭を巡らせなけりゃならない
人を助ける時のように自分を助ける力を出して
自分で道を歩いて行こう
道が通っているから
自分の行くべきところがある
包丁に軽く触れ
愛に傷をつける
そのまま立って
過去を振り返ってみると
もうそこには何もない
心がいっぱいになり
私は空漠と充実を密接な位置に置く
まやかしにやられてしまった犠牲者の一人である
私は突き詰められた真実を望むのである

文学極道

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